こんなユースホステルなら泊まってみたい。全国の個性派ユースホステル10選

起源は100年以上前のドイツにさかのぼります。当時、工業化が進んだドイツ都市部では、子どもの健康が損なわれるように。それを心配した教師リヒハルト・シルマンが、試しに郊外の森で授業をしたところ、子どもに笑顔が戻りました。さらにシルマンが子どもたちの長期の徒歩旅行を計画したところ、使える宿がないことが判明。そこから発展して「若者のために安全に安く泊まれる宿」として生まれたのがユースホステルです。現在、約80の国と地域に、4000か所以上のユースホステルがあります。

日本では1951年に初めてユースホステルができ、利用者数は高度成長期にピークを迎えます。その後長らく減少し続けていましたが2012年には再び増加に転じ、2015年は延べ40万人超が利用しています。うち25％が外国人旅行客で、宿泊システムが海外のユースホステルと同様で使いやすいため、積極的に利用されているようです。

現在約220か所のユースホステルが、北は北海道から南は沖縄の八重山諸島まで点在しています。合宿に使える大型の施設もあれば、個人経営の一軒家まで規模はさまざまで、都市部や離島にもあります。最近は時流を反映して個室化、子ども連れでも泊まりやすいユースホステルが増えています。また、体験型のアクティビティができる、日本酒に詳しいなど、ペアレントのカラーが打ち出され、選ぶ楽しみがあります。

ユースホステルは「旅の我が家」であり、ユースホステルを運営している人を「ペアレント」、利用する人を「ホステラー」と呼びます。その名の通りペアレントさんは親のように「おかえりなさい」と出迎えてくれます。このアットホームさが最大の特徴です。

宿泊料金は3～4千円前後（会員料金）と安く、ベッドメイクや食事がセルフサービスで、男女別相部屋のドミトリー形式になっています。ドミトリー形式に不安を覚える方も多いかと思いますが、貴重品ロッカーが完備されている場合がほとんどです。あとは、同室者のいびきに備えて耳栓を携行すれば、他にあまり心配はいりません。ペアレントさんや他のホステラーと交流するしないも自由です。消灯時間等の決まりはユースホステルによって違うので、事前にご確認ください。

「ユース（青年）」とついていますが、だれでも宿泊できます。会員になると料金が安くなるので、一度泊まって気に入ったら会員になったほうがお得です。

ここは“伝説”のユースホステルと呼ばれています。昔のユースホステルは集団行動が重視されていて「ミーティング」に全員参加で歌って踊ってと、かなり体育会系でした。今現在、このスタイルが体験できるのは、ここ桃岩荘ぐらいしかありません。これを求めてわざわざ礼文島まで来る人もいるほどです。

礼文島にフェリーで渡って到着する、桃岩荘のヘルパーさん（従業員）たちが大声で「おかえりなさ～い!!」と出迎えてくれます。「見送り」のときも同様です。幌付きトラックの荷台に乗って、一路桃岩荘を目指します。夕食後はかの有名な「ミーティング」がはじまります（強制ではありません）。歌や踊りが延々と繰り広げられ、最後は大団円で終了。一転して、消灯時間になるとバチッと電気が消え、静寂が訪れます。

桃岩荘の食事には礼文島名物は出ません。料理が苦にならない方は自炊がおすすめです。ただし、近隣にお店はないので、事前に用意しておきましょう。礼文島を約30kmトレッキングする「愛とロマンの8時間コース」も体験できます。桃岩荘は好き嫌いが分かれる超個性派ですが、どっぷり浸る覚悟で来れば話のタネになるのは確実。ぜひ連泊して桃岩荘と礼文島を満喫してください。開所しているのは6～9月末の4か月だけです。

北海道には「釧路湿原とうろユースホステル」「リフォレ積丹ユースホステル」「島牧ユースホステル」をはじめ、ハイレベルで個性的なユースホステルがほかにもたくさんあるので要チェックです。

マンションやビルが立ち並ぶ一角に、エアポケットのように建つ古民家のユースホステル。古いながら清潔に保たれ、食事もおいしいと評判です。まるで旅館みたいなのに料金はリーズナブルなので、コストパフォーマンスは最高です。リピーターが多いのも頷けます。宮城県内の約250軒の宿のなかで「ミシュラン」に選ばれた3軒のうちのひとつといえば、レベルの高さがわかるというものです。2017年12月29日から2018年1月5日は臨時休館。

東京の下町、浅草エリアに位置します。2015年に改装され、和モダンなユースホステルになりました。花街だった頃の雰囲気を反映し、黒い板塀と赤く染め抜かれた大きなのれんが目を引きます。浅草という場所柄もあり、利用客の実に6割が外国人旅行客なんだそう。

ドミトリータイプ（1泊1人3600円）だけでなく、ツイン（1泊1室8200円）、トリプルルーム（1泊1室11700円）もあります。キッチンも完備されているので、自炊も可能です。

ぶどう畑に囲まれた高台にあるユースホステル。リビングに大きくとった窓からは、甲府盆地が見渡せます。ここの名物はなんといってもワイン。23時までリビングでワインを飲みながらくつろげます。近隣には、160銘柄以上のワインが試飲できる「ぶどうの丘ワインカーヴ」もあるので、ワイン好きにはたまりません。温泉施設「天空の湯」も近く、入浴はそちらでという楽しみ方も。どちらもペアレントさんが送迎をしてくれます。夫婦・家族連れの場合は個室利用ができます。

昔の古い小学校を改装したユースホステルです。外観は往時そのままに、内部は木をふんだんに使って宿泊できるように改装してあります。ムササビが棲みつくほど豊かな自然に囲まれた環境で、四季おりおりの自然体験ができます。例えば、星見会、ホタル観賞、香嵐渓（紅葉の名所）で秋の紅葉のライトアップ見学などです。

食事は家庭料理のようにホッとする味で、調味料や素材もできるだけこだわって選んでいます。全館禁煙の宿として豊田市から認定されています。

善光寺の宿坊のひとつで、ユースホステルでもある宿です。築100年以上の建物は趣があります。善光寺の門前にあり、観光利用に便利です。夕食の提供はありませんが、近隣に飲食店は多数あるので困りません。ペアレントであるお母さんは、特にグルメ関係の話題が豊富でいろいろ教えてくれるそうです。建物は古いものの清潔に保たれていて、利用した人の評価は高いです。

規模の大きいユースホステルとしてはトップクラスの品質で、世界で一番居心地の良いホステル（Most Comfortable Hostel）を 受賞。ビギナーにぜひおすすめします。2008年に赴きある建物に建て替えられたので、非常に美しく清潔感もあります。外国人旅行客の利用も多いので、国際交流ができるかも!?ただ、嵐山方面に位置していてアクセスがバス主体になるのと、規模が大きいのでホステラーが多いときは落ち着かない場合もあるかもしれません。家族連れ、子ども連れにはかえって利用しやすいでしょう。連泊してのんびり過ごせる京都旅行にぜひおすすめです。

「酒の国共和国」という別名がついているユースホステル。その名の通り、ペアレントさんはかつて酒造メーカーにお勤めだったのです。食堂には大型冷蔵庫が置かれ、日本酒の一升瓶がぎっしり！また、日本酒関連のイベントもよく開催していて好評を博しています。きれいな和風一軒家は木がふんだんに使われていて、ペアレントさんの穏やかなお人柄も相まって、とてもくつろげます。空いていれば個室対応もしてくれます。季節によってはたけのこ堀りやホタル観賞なども。

さすが湯布院だけあって、源泉かけ流しの温泉付きユースホステルです。元旅館を改装した和風の落ち着いたたたずまいです。食事は質・量ともに抜群で、井戸水を使っているのでひと味違います。また、交流を楽しみたい人には、通年で毎晩さまざまなイベントが。開催条件が「ペアレントの気分がノッたとき」などとなっていて、このゆるさもまたよし。日本ユースホステル協会から最高位の認定を受けているだけあり、利用者の評価は高いです。

屋久島の玄関口・宮之浦港近くでアクセスがよく、清掃が行き届いていて快適に過ごせると評判です。スタッフは屋久島のことをよく知っていて頼りになります。屋久島の宿といえばココというくらい定評があるのも納得。食事は提供しておらず、ユースホステルには簡易キッチンがあるのみです。ごく近くにスーパーマーケットや飲食店が複数あるのでご安心を。

屋久島南部には姉妹宿の「屋久島サウスビレッジ」があります。こちらは長期滞在を想定して、キッチン、AVルーム、図書室などの設備も整っています。ハンモックでのお昼寝もできるとか！近隣に温泉が複数あるので、のんびり楽しめそうです。

バリエーション豊かな個性派ユースホステルを10軒紹介してきました。ペアレントさんの特技、やりたいことがしっかり反映されていて、どこも魅力的です。安さだけを求めるのではなく、旅先での出会い・ふれあいも楽しみたい旅行者にはユースホステルはうってつけです。全国各地にまだまだたくさんある個性的なユースホステルを巡って、旅のいろどりを倍増させましょう！