【奈良編】食に感謝し心と体を整える。『精進料理』を楽しめる寺院3選

【奈良編】食に感謝し心と体を整える。『精進料理』を楽しめる寺院3選

精進料理とは、元々は修行僧の食事を指す言葉。僧にとって、食に関するあらゆるものに感謝して精進料理を食すことは修業のひとつでもありました。私たちにとって、寺院という日常を離れた空間でいただく精進料理は、食への関心を高め、食への感謝をあらためて考え直すよい機会。精進料理をいただける奈良の寺院で、心も体もリフレッシュしませんか。

2018年03月24日

心身を正しく整えるための良薬『精進料理』

「篩月」 内観 12889171 店内

出典:

『精進』は、僧がひたすらに仏道修行に努めて悟りを極めること。『精進料理』は、修行僧にとって美食を戒め粗食をする行(ぎょう)であり、心身を正しく整えるための良薬でもありました。また、仏教では殺生が禁じられているため魚や肉を使わず、野菜・豆・穀類を工夫して調理します。その技術は日本料理を発展させました。寺院で精進料理をいただくことは、和食の創意工夫を学びながら心身を整えることにつながります。今回は、奈良にある精進料理を味わえる寺院を、見どころとともにご紹介していきます。

1.慈光院(じこういん)

石州流茶道の開祖が手掛けた壮大な茶室

慈光院について

慈光院について1551722

出典:アズミノさんの投稿

江戸時代初期・寛文3年(1663)、大和国小泉藩2代目藩主の片桐貞昌が、初代藩主の父・貞隆の菩提寺として建立した臨済宗大徳寺派の寺院。片桐貞昌(片桐石州)は、豊臣秀吉の重鎮で“賤ヶ岳の七本槍”の一人である片桐且元(かつもと)の甥にあたり、石州流茶道の開祖として知られています。

慈光院のみどころ

慈光院のみどころ1574853

出典:七さんの投稿

慈光院の最大の特徴は、境内全体が一つの茶席として造られていること。例えば、うっそうとした山の中のような参道と茅葺き屋根の茨木門や美しく刈り込まれた木々・白砂のお庭を目にした時の驚き。300年を経た現在でも、石州のおもてなしの演出を随所に見られる貴重な場所です。石州の代表的な茶室『二畳台目』と、千利休の長男・千道安の好みと呼ばれる茶室『三畳』・『書院』は重要文化財に指定されています。

慈光院の精進料理

「慈光院」 料理 2134301 会席\6,300 これにご飯とお味噌汁が付きます

出典:はろききさんの投稿

昭和初期、慈光院の周りは田んぼが一面に広がっている田舎でした。食事をできるお店もないので、何か食べさせてほしいという参詣者の声に応えて始めたのが慈光院の精進料理。境内で育てた野菜や自生する山菜など僧が口にするものと同じ材料を用いて参詣者の心と体を満たすお料理には、茶の湯のおもてなしの心が活きています。

「慈光院」 料理 54101594 うすいまめ(エンドウ豆)豆腐

出典:てんてんおめめさんの投稿

精進料理では定番のお豆腐。特に禅寺では胡麻豆腐が有名ですね。慈光院では、初夏には緑が目にも鮮やかな『うすいまめ(=えんどう豆)豆腐』、秋には『銀杏豆腐』、と季節の素材を活かしたお豆腐が楽しめます。

「慈光院」 料理 33147870 玉ねぎの吸い物

出典:立花立夏さんの投稿

慈光院の名物『玉葱の丸煮』。精進料理をはじめた昭和初期から変わらぬ一品として提供されています。慈光院の境内で作った玉ねぎをできるだけ使い、水で3・4時間コトコト炊いたシンプルな煮物。たっぷり上に乗せられた生姜は、寒い冬に体の温まるお料理をというおもてなしの心づかいです。慈光院の境内にある井戸水を使わないとこの味は出せないのだそう。

慈光院の詳細情報

慈光院

大和小泉 / カフェ・喫茶(その他)、精進料理

住所
奈良県大和郡山市小泉町865
営業時間
9:00~17:00 ランチ:11:30~14:00(予約制)
定休日
不定休
平均予算
  • ¥1,000~¥1,999
  • ¥1,000~¥1,999

データ提供

2.長弓寺(ちょうきゅうじ)

生駒の古刹を守る塔頭寺院でいただくお斎(とき)

長弓寺について

長弓寺について1551791

出典:

長弓寺は生駒市上町にある真言律宗の寺院です。『長弓寺縁起』によると、開山は奈良時代。この土地に住む豪族・小野真弓長弓(おののまゆみたけゆみ)がその息子と聖武天皇の狩りにお供していた折、息子の放った矢に当たって亡くなってしまいます。聖武天皇はこのことを悲しみ、僧・行基に長弓寺を開かせました。盛時には塔頭(たっちゅう)が20坊もあったそうで、現在は4坊だけが残っています。

※塔頭・・・高僧の死後、弟子が師を慕ってその寺のほとりに小房を設けて住んだのがはじまり。転じて大寺に所属する小寺のこと。

長弓寺のみどころ

長弓寺のみどころ1551795

出典:

本堂は、真言律宗の祖・叡尊(えいそん)によって1279年に再興されたもの。檜皮葺の屋根や意匠の一部に、日本の伝統的な寺院建築様式の一つ大仏様(だいぶつよう)を採り入れるなど鎌倉時代の『新和様』様式の建築物で、国宝に指定されています。本堂に安置されている本尊・十一面観音立像は、黒漆厨子(くろうるしのずし)とともに鎌倉時代の作で、国の重要文化財。長弓寺本堂には住職はおらず、拝観には事前予約が必要です。

長弓寺の精進料理(薬師院)

長弓寺の塔頭である薬師院・円生院・法華院の3寺で精進料理を提供されていますが、今回は薬師院の精進料理をご紹介いたします。

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薬師院で提供される精進料理は『お斎(おとき)』呼ばれています。お斎とは、食事をする「時(とき)」に語源を発すると言われ、元々は僧の食事のことでしたが、法要の後に僧や参会者に振る舞う食事のことを指すようになりました。薬師院では、法要に限らず前日までに予約することで誰でもお斎を楽しむことができます。

胡麻豆腐や生麩などを中心に、旬の野菜を使った淡白なお料理の数々。季節感を大切にし、地産地消を心がけています。お斎のコースは、『一汁八菜』・『一汁十菜』・『一汁十二菜(抹茶付)』の3コースです。お食事場所は、生駒の田園風景を借景にした庭の見える閑静な庫裡(くり)。新緑、紅葉、雪など四季折々の情景を見ながらいただくお料理は格別です。

※庫裡(くり)とは、仏教教寺院における建物のひとつ。寺の台所を兼ねる場合もあり、その多くは住職や家族の居間を指します。

3.大願寺(だいがんじ)

『薬のまち』でいただく見目麗しい薬草精進料理

大願寺について

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薩埵山(さったさん)大願寺は、奈良県宇陀(うだ)市大宇陀にある真言宗御室派の寺院です。聖徳太子が蘇我馬子に命じて建立したと伝えられています。江戸時代初期、織田信長の孫にあたる宇陀松山藩主・織田出雲守高長が祈願所とし、その後『毘沙門堂』や『白山権現社』など織田家に関わりのある建物が建てられました。

大願寺の見どころ

現在、季節の木々が美しい境内には本堂・毘沙門堂・仏足堂・庫裡(くり)と、少し高いところに白山権現社が建っています。毘沙門堂の前に建つ狛犬ならぬ『狛虎』、明治時代に本堂が全焼したあと土中より発見され「焼けずの観音」として信仰を集める『本尊・十一面観音像』、『おちゃめ庚申(こうしん)』の名で親しまれる漫画風の庚申石仏は必見です。

大願寺の精進料理

「大願寺」 料理 3919438 前菜

出典:stamafamiさんの投稿

大宇陀は、『森野旧薬園』に代表されるように薬草を栽培したり、薬草から作った薬や薬酒を販売したりと、「薬のまち」として有名なところ。大願寺では大宇陀名物の薬草を使った精進料理がいただけます。一つ一つは少量ですが、品数が多く、目にも楽しく体にも優しいお料理がたのしめます。

※『森野旧薬園』・・・奈良県宇陀市にある日本最古の薬草園。江戸時代中期に作られ現在も当時の姿を残す希少な薬園です。

「大願寺」 料理 3919458

出典:stamafamiさんの投稿

「刺身」はまるでイカのお刺身のように見えますが、吉野本葛で作られています。吉野本葛とは、添加物やその他のでんぷんが混ざっていない純度100%の葛でんぷんを指し、大宇陀では古くから名産品として栽培されてきました。ご住職によると、秒単位で味が落ちるそう。出来立てを提供してくださるので、すぐにいただきましょう。ぷるぷると震える食感が楽しい一品。

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蓬(ヨモギ)・雪ノ下・どくだみ・高麗人参など『薬草の天ぷら』は、ほろ苦さや香りを楽しめる大人の味わい。一般的な精進料理でも見ることのあるメニューですね。こちらでは、デザートにも薬草が使われています。自家製『どくだみのシャーベット』は、どくだみの強いクセを上手に和らげ、西洋のハーブのように爽やかな香りに仕上げています。

大願寺の詳細情報

大願寺

宇陀市その他 / 精進料理

住所
奈良県宇陀市大宇陀拾生736 大願寺
営業時間
11:00~14:00(予約制)
定休日
不定休
平均予算
  • ¥4,000~¥4,999

データ提供

食事への感謝を大切にする精進料理

「篩月」 料理 12889268 「花」コース

出典:

殺生を禁じ、その土地・その季節にあるものを工夫して調理される精進料理。食べ物があること、食べ物をはぐくんだ自然、食べ物が口にのぼるまでに関わった人々など、あらゆるものに感謝する心を学ぶ機会として、寺院での精進料理を体験してみてくださいね。

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