2017年01月20日

世界遺産になる前に行っておこう!五島列島の教会めぐり

世界遺産になる前に行っておこう!五島列島の教会めぐり

長崎県の西に浮かぶ五島列島へ、世界遺産に登録申請中の教会をめぐる旅へ出かけませんか?見学する際のマナーや注意点を事前に勉強してから、キリシタンの迫害の歴史や信仰への強い思いを心で感じる旅へ出発しましょう。

思わず息を呑む美しい長崎の島、五島列島

五島列島ってどんなところ?

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出典:Usamiさんの投稿

大小150ほどの島からなる五島列島は、長崎港から西へ約100kmのところに位置する九州最西端の島々です。福江島から奈留島までを下五島、若松島と中通島から宇久島までを上五島と呼び、最北端から最南端の島までは約150kmにわたります。海と山に囲まれた手付かずの自然や、夏は涼しく冬は暖かい過ごしやすい気候も魅力です。

五島列島ってどんなところ?1007477

出典:瀬戸の素浪人さんの投稿

五島列島は、潜伏キリシタンの島としても知られています。徳川家康が出した禁教令によりキリシタンに対する迫害がますます激しくなった江戸時代、約3000名の隠れキリシタンが仏教徒を装い五島列島に移り住みました。壮絶な迫害の歴史は約250年も続き、その間も信徒はひそかに信仰を続け、五島列島には今も50もの教会が現存しています。五島列島は、信徒の強い想いに溢れた「祈りの島」なのです。

五島列島ってどんなところ?1007585

出典:

世界遺産登録を目指す教会群

潜伏キリシタンの歴史を物語る五島列島の教会群。その中の4つの教会が、2017年現在「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」として世界遺産候補に上がっています。
世界遺産に登録申請中の教会は以下です。

・旧五輪教会堂(久賀島)
・江上天主堂(奈留島)
・頭ヶ島天主堂(頭ヶ島)
・旧野首教会(野崎島)

世界遺産登録を目指す教会群1007507

出典:

廃村を丘の上から見守る旧野首教会。

五島列島へのアクセス

五島列島の玄関口となるのは、下五島の「福江島」と上五島の「中通島」。福岡、佐世保、博多の3港からフェリーや高速船が運航しています。目安の所要時間は、長崎港~福江港が高速船で約1時間25分、中通島の奈良尾港まで1時間15分。島間のアクセスは船での移動が基本となり、いくつかの会社が運航しているので、観光案内所で時刻表を確認するのが確実です。定期船のスケジュールが合わないときは、海上タクシーをチャーターする手もあります。

五島列島へのアクセス1007582

出典:瀬戸の素浪人さんの投稿

海上タクシーは一人から利用できます。

また島内は道が入り組んでいたり、行きにくい場所に教会があることもあり、初めて行かれる方は船や飛行機がセットになったパッケージツアーを利用するのもおすすめです。

島内の移動はタクシーを利用

福江島や中通島などの大きな島ではレンタカーや公共バスなどがありますが、世界遺産候補の教会が位置する久賀島や奈留島、頭ヶ島は公共交通が不便なためタクシーを効率よく利用しましょう。野崎島は無人に近い島のためタクシーはなく、徒歩での移動が基本です。

島内の移動はタクシーを利用1007587

出典:

五島列島のレンタカー会社では電気自動車の貸し出しも行っています。充電設備も主要観光スポットに配置されていて充実しています。

訪れる前に必ず知っておきたい観光時の注意点

教会は、信徒の方々の大切なお祈りの場です。また島自体も地元の方の生活の場なので、観光客を気持ちよく受け入れてもらえるようマナーを守って観光しましょう。

訪れる前に必ず知っておきたい観光時の注意点1007624

出典:瀬戸の素浪人さんの投稿

<教会を見学する際に気をつけること>
●神聖な場所である祭壇には絶対に立ち入らない
●ミサが行われている時は入堂を控える。また写真撮影はNG
●教会内で飲食や喫煙は禁止
●祭礼品や装飾物にむやみに手を触れない
●トイレの利用は教会以外で
●内部写真禁止の教会では必ず守る

訪れる前に必ず知っておきたい観光時の注意点918239

出典:

多くの方々の祈りが詰まった神聖な場である教会。基本的には誰にでも開かれた場所ですが、感謝・尊敬の意を持って行動しましょう。また、教会によっては見学に事前予約が必要なところもありますので(世界遺産候補の教会はすべて事前予約が必要)ホームページなどで確認しましょう。

それでは旅の始まりです

世界遺産候補をすべて巡るとなると3泊はしたいところ。そこまで日程が取れない…という方は、いくつかを抜粋して巡るのもいいでしょう。今回は、世界遺産候補の4つの教会と、そのほかに交通の拠点となる「福江島」と「中通島」の特に見ておきたい教会をあわせてご紹介します。

それでは旅の始まりです1009031

出典:tanu55さんの投稿

福江島にある堂崎天主堂。ここにある資料館で潜伏キリシタンについて学んでから教会めぐりをするのがオススメです。

世界遺産候補の教会をめぐろう

【世界遺産候補】旧五輪教会堂(久賀島)

仏教徒の助言によって解体を免れた木造の教会

【世界遺産候補】旧五輪教会堂(久賀島)918160

出典:

まずは、久賀島にある「旧五輪教会堂」へ。1881年に建てられた旧浜脇教会が老朽化によって建替えられる際、解体される寸前で仏教徒の助言によって今の場所に移築されたという歴史を持つ教会です。今は教会としては使用されていませんが、ひっそりと厳かに現存しています。田ノ浦港からタクシーで40分、その後徒歩15分と不便な場所にありますが、教会巡りの際はぜひ訪れたい世界遺産候補です。

【世界遺産候補】旧五輪教会堂(久賀島)1009120

出典:

見学には事前予約が必要なので注意。小さな教会ですが、とても厳かな雰囲気に満ち溢れています。

【世界遺産候補】江上天主堂(奈留島)

手作りを感じさせる鉄川与助設計の教会

【世界遺産候補】江上天主堂(奈留島)1008217

出典:

久賀島からひとつ北にある奈留島へ移動しましょう。この島にあるのは、1918年に島の50戸あまりの信徒が地引網で作った資金を出し合い、共同で建てたという「江上天主堂」。日本における教会建築の父と呼ばれる鉄川与助(てつかわよすけ)によって設計されました。海に近い場所に建てられているので、湿気対策として高床式に作られています。

【世界遺産候補】江上天主堂(奈留島)1008214

出典:

手書きの木目の柱やステンドガラスの変わりにと描かれた窓の絵など、信徒の手によって作られた温かい雰囲気の教会です。こちらの教会も内部の見学には事前予約が必要。

※2016年12月1日~2017年8月末(予定)は保存修理工事が行われるため、敷地に立ち入っての見学ができません。また、足場設置のため、外観に影響が生じます。期間中は、教会堂が見える場所に設置した展示パネルを活用したガイドにて対応。

【世界遺産候補】頭ヶ島天主堂(頭ヶ島)

鉄川与助が設計した石造りの天主堂

【世界遺産候補】頭ヶ島天主堂(頭ヶ島)918103

出典:

上五島の中心である中通島から陸路でいける頭ヶ島。「頭ヶ島天主堂」は、1917年に完成した100年程の歴史を持つ教会です。五島列島の教会では珍しい石積みの教会で、教会の前には拷問に使われたという石も公開されており、悲しい歴史と信仰の強さ、深さを感じさせられます。内部の見学には事前予約が必要です。

【世界遺産候補】頭ヶ島天主堂(頭ヶ島)1009113

出典:

内装の随所にツバキを模した花柄模様が散りばめられていることから、「花の御堂」という愛称があります。

【世界遺産候補】旧野首教会(野崎島)

17世帯の祈りによって生まれた高台の小さな教会

【世界遺産候補】旧野首教会(野崎島)1008293

出典:

頭ヶ島からさらに北へ移動しましょう。「旧野首教会」は、無人島となった野崎島の高台に、廃村を見つめるように建つレンガ建築の教会です。教会が建つ「野首集落」は潜伏キリシタンが移り住んだ場所で、特に信仰が強かった地域といわれています。この集落の17世帯が貧しいながらに生活を切り詰め、資金を捻出して建てた教会です。1908年に鉄川与助の設計施工で完成しました。見学の際は、おぢかアイランドツーリズムへの事前連絡が必要です。

【世界遺産候補】旧野首教会(野崎島)1009153

出典:

島民たちは共同生活を送り、食事の回数を減らすなどして生活を切り詰め資金を集めたのだそう。祈りの力によって生まれた遺産なんですね。

【世界遺産候補】旧野首教会(野崎島)1008320

出典:

野崎島は、野生のシカがのんびりと暮らす穏やかな島です。

世界遺産候補のほかにも、見ておきたい教会群

教会めぐりの交通の中心となる「福江島」や「中通島」にもたくさんの教会があります。時間があったらぜひ訪れてほしいいくつかをピックアップしてご紹介します。

堂崎天主堂(福江島)

隠れキリシタンの歴史について学べる教会

堂崎天主堂(福江島)918174

出典:

1908年に新築されたレンガ造りの「堂崎天主堂」は、キリシタンの禁制の解除後、五島カトリックの復活の拠点となった場所です。内部は資料館になっており、キリシタン迫害の歴史や隠れキリシタンに関する品、当時の島の様子の写真が展示されています。実際に使用されて擦り減った踏絵などを見ることができ、この地で起こった歴史をより身近に感じることが出来ます。資料館で知識を得てから教会めぐりをすると、また違ったものになりますよ。

井持浦教会(福江島)

日本で初めて作られたルルドの泉がある教会

井持浦教会(福江島)918193

出典:

1959年、聖母が出現した際に湧いた泉の水が不治の病を治したことから、フランスのルルドの洞窟にある泉はキリスト教徒にとって非常に神聖なものです。1891年に、バチカンの宮殿内にルルドの泉を模したものが造られたことにならい、世界中でルルドの泉が作られるようになりました。「井持浦教会」には、日本で始めて作られたルルドの泉が存在します。

井持浦教会(福江島)918197

出典:

中ノ浦教会(中通島)

水面に映る姿が穏やかで美しい「水鏡の教会」

中ノ浦教会(中通島)918185

出典:

1925年に建てられ、1966年に増設されたというとんがり帽子のような鐘塔がシンボルの「中ノ浦教会」。水面に美しい姿を映すことから別名「水鏡の教会」と呼ばれています。この教会は内部の美しさも必見もの。五島列島で古くから大切にされている椿の装飾がなされた温かく柔らかい雰囲気の教会です。

小瀬良教会(中通島)

山城のように石垣の上に建てられた赤い屋根の教会

小瀬良教会(中通島)1009177

出典:

1951年に建てられたという比較的新しい小瀬良教会は、真っ白の外壁と赤い屋根が愛らしい木造の小さな教会。高台の石垣の上に建てられていて、島民からいかに大切にされていたかが伺えます。

小瀬良教会(中通島)918188

出典:

仲知教会(中通島)

島の漁師を描いたステンドグラスが美しい教会

仲知教会(中通島)918200

出典:

仲知教会のある地域は五島列島の中でも特にカトリック信者が多く、1978年に仲知教会が建てられた際には信者たちが多額の財力と労力を捧げ、五島列島有数の美しいステンドグラスを持つ教会に作り上げました。ステンドグラスの絵柄には信者の中心として建設に携わった住民も描かれており、教会と島民の繋がりを強く感じられる教会の一つです。

紹介しきれないほどの歴史と魅力がある五島列島

紹介しきれないほどの歴史と魅力がある五島列島1009257

出典:tanu55さんの投稿

五島列島にはまだまだたくさんの教会があります。今回は詳しく紹介できませんでしたが、美しいビーチや緑たっぷりの自然も五島列島を訪れる際には楽しんでもらいたい要素の一つ。悲しい歴史と美しい自然がある五島列島への旅が、心でたくさんのことを感じるすばらしい経験になることを願っています。

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