2017年04月14日
国の天然記念物を見に行こう!刈谷市小堤西池のカキツバタ群落
甲乙つけがたい美人を比較するコトワザに「いずれアヤメかカキツバタ」とあるように、昔から美人を例えるものとして使われてきた「カキツバタ」。確かに、ぽってりと垂れ下がった群青色の花は美女のようにあでやかです。愛知県刈谷市には小堤西池というカキツバタの大群生地があり、国の天然記念物に指定されています。見ごろになる5月、一面にカキツバタが咲き乱れる小堤西池で、初夏のお花見を楽しみませんか?
刈谷市の最北部にある2万330平方メートルの小堤西池(こづつみにしいけ)は、国内最大級のカキツバタ自生地として、昭和13年に国の天然記念物に指定された貴重な場所です。
愛知県の県花にもなっているカキツバタ。実は、愛知県は花き(かき・観賞用の花をつける植物)の生産額では日本でもトップクラスで、お花産業が盛んなところです。お花にあふれた愛知県で、選び抜かれた県花がカキツバタなのです。カキツバタの開花時期は5月頃。群青色に染まる小堤西池へお花見さんぽしに行きませんか?
カキツバタはシベリア~東アジアの湿地帯に分布している多年草です。それほど珍しい花ではありませんが、日本では湿地が減っているために、自生している場所は国内で10か所程度。小堤西池以外には、鳥取県の唐川湿原、京都府の大田の沢があります。
カキツバタは、アヤメ科/アヤメ属の植物です。現在は約50種類ほどの園芸種がありますが、小堤西池のカキツバタは自然のままの群落にしてあるため、株ごとに花の色や大きさが違います。天然記念物のため肥料も与えませんから、背丈が低くて花も小ぶりなのが特徴です。ごくごく自然なカキツバタの群生が見られる貴重な場所なのです。
カキツバタは浅い水中に生えていて、花には細くて白い模様が入っています。ショウブは湿原や水辺に生え、花の模様はクッキリした黄色です。アヤメは乾地に生え、花の模様は網目状です。生えている場所と花の模様によって、意外と簡単に見分けがつくんですよ。ついでに言うとカキツバタとアヤメはアヤメ科で、ショウブはショウブ科と別の植物科なんです。
【刈谷市・小堤西池】カキツバタの花が開く瞬間 - YouTube
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こちらは、カキツバタが開花した瞬間をとらえた貴重な映像。カキツバタを見たことがあっても、まさかこんな開き方をするとは!衝撃的ですよね。
国の天然記念物に指定されているため、肥料などを入れられない小堤西池。カキツバタを守るために地元有志が集まり、昭和51年から池の手入れをはじめ、美しい環境保全のために大活躍しています。小堤西池にはヨシやマコモなども茂っているため、定期的にお手入れをしないとカキツバタが見えないほど伸びてしまうのです。この「カキツバタを守る会」は、開花シーズン中にカキツバタガイドもしてくれています。
なお自然保護の面から、見学時にはいくつか注意点があります。まず池の中や隣接する丘陵地内には入らないこと。動植物の採取はもちろんNGですし、動植物の持ち込みもNGです。ゴミも必ず持ち帰り、カキツバタの生育環境を守るようにしましょう。
開花期間中(5月上旬から下旬頃)は、小堤西池周辺に自家用車は入れません。車は南側にある洲原公園駐車場にとめます。洲原公園第2駐車場(170台)は池まで徒歩約15分、洲原公園第4駐車場(145台)池まで徒歩約25分です。ちょっとかかりますが、のんびりお散歩のつもりで歩きましょう。
公共交通機関を利用するなら、名鉄知立駅前から名鉄バス「イオン三好店アイモール前」行きか、「日進駅」行きに乗り、「上ノ郷(かみのごう)」で下車すると、池まで徒歩約10分で到着します。
それでは、カキツバタの美しい姿をご紹介しましょう。初夏のさわやかさを体現したような、見事な艶姿ですよ。
カキツバタは水中に生えるもので、小堤西池のカキツバタには地下茎から繁殖するものもあります。同心円状になった茎からどんどんカキツバタが生えてきます。ひとかたまりの株内にあるカキツバタは同じ遺伝子を持っているのだとか。
水中からすっきり立ち上がった姿はとても可憐です。ほんわりと垂れ下がった花が風にそよそよと揺れるのも素敵。
小堤西池は周囲を自然に囲まれているため、いろいろな生き物がやってきます。タイミングが良ければカキツバタとシロサギのツーショットが撮影できるかも。色のコントラストがとてもきれいですよ。
いつ見てもきれいなカキツバタですが、できれば早朝に行って朝露にぬれた姿を楽しみたいもの。露をもった花はいっそう風情を感じます。
カキツバタと言えば、伊勢物語の和歌にも登場します。「から衣(ころも)/着つつなれにし/つましあれば/はるばる来ぬる/旅をしぞ思ふ」。平安貴族の在原業平(ありわらのなりひら)が詠んだもので、和歌の句の先頭の音が「か」「き」「つ」「は」「た」になっています。優雅に立つカキツバタの姿が平安貴族をイメージさせますね。
これだけの数のカキツバタが群生しているところはあまり多くありません。梅雨の前の短い初夏の1日を、可憐なカキツバタを眺めながら、ゆったり過ごしてみてはいかがですか?
小堤西池のカキツバタ群落 【国指定天然記念物】|刈谷市
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