2017年06月21日

無言の美しい舞いをご堪能あれ!静寂の夏祭り「おわら風の盆」とは?

無言の美しい舞いをご堪能あれ!静寂の夏祭り「おわら風の盆」とは?

夏といえばお祭り。お祭りといえば、明るいお囃子に賑やかな人々の声がつきものですよね。富山県富山市には、そんなお祭りの常識を覆す、珍しいお祭りがあるんです。夏の終わりにしめやかに行われる「越中おわら風の盆」は、一言で形容するなら“幻想的”。その魅力や楽しみ方、注意したい点などをご紹介していきます!

静寂と哀切の祭り

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出典:☆hide☆さんの投稿

「おわら風の盆」は、富山県富山市の八尾(やつお)という地域に古くから根付くお祭りです。最大の特長は、とても静かなこと。どのくらい静かかというと、毎年往来を埋め尽くすほどの観光客が訪れるにもかかわらず、踊りの間に聞こえるのは地方(じかた)と呼ばれる演奏と唄、そして踊り手の衣擦れのみ。

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出典:suzakid77さんの投稿

粛々と踊られる「おわら」は、どこかもの悲しく、そして美しく、夏の終わりを惜しむような風情で満たされています。いったい、何がそうさせているのでしょうか?

地方(じかた)に聴き惚れる

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出典:シロエビさんの投稿

「おわら」を語る上で欠かせないのが、唄と楽器で奏でる「地方(じかた)」。切なくなる音色の正体は、日本の弦楽器・胡弓です。細く高い音色に三味線や太鼓、お囃子が加わり、そこに唄い手が入れば地方の完成。唄は胡弓に似た高い音調と、息継ぎなしの独特な節回しで、一度聴いたら耳から離れません。

地方は「唄い手」「囃子」「三味線」「太鼓」「胡弓」をいいます。三味線が出を弾き、胡弓が追います。太鼓が軽く叩かれ調子を上げると囃子が唄を誘います。唄は甲高い声で唄い出し息継ぎなしに詞の小節をうねらせ、唄は楽器に応え、楽器は唄に応えます。

出典:おわらの歴史:唄に寄り添う響き|越中八尾 おわら風の盆

美しい踊りにうっとり

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出典:写心家さんの投稿

そんな地方に合わせる踊りは3種類。豊作を祈る「豊年踊り」と、躍動感溢れる「男踊り」、そしてしなやかな「女踊り」とがあります。ゆったりとした動きながら、洗練された身のこなしが地方の哀切感をさらに盛り上げます。

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出典:シロエビさんの投稿

男女どちらも編み笠を深く被り、顔を隠すように踊るのが印象的です。表情が見えないぶん、さまざまなことを想像させられますね。

街並みが映える

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出典:水橋IMOさんの投稿

そしてもう一つ。八尾は、石を積み上げた上につくられた、坂の多く細長い地区。趣きのある古い建物や用水路「エンナカ」の風景に、数千の提灯が淡く浮かびます。どこか懐かしさを感じさせる街並みに、日本人なら誰でも郷愁を感じるでしょう。

「おわら風の盆」を観に行こう!

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出典:zooさんさんの投稿

ここからは、実際のお祭りについてご紹介します。お祭りを訪れる際の参考にしてみてください!

11支部の競演!

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出典:水橋IMOさんの投稿

風の盆を踊るのは、旧町と呼ばれる10地区と、町内外から移り住んだ人たちの計11支部。支部ごとに、着物や踊り方などさまざまな特色があるので、見比べてみるのも面白いですよ。

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出典:丹波屋さんの投稿

風の盆は、それぞれの支部がそれぞれの地区で自主的に踊る、というちょっと変わった形態を取っています。実は、全支部が一堂に会することはありません。

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出典:シゲノリさんの投稿

もともと人に見せるためのお祭りではなかったため、屋台が沿道に並んだり、メインイベントが用意されていたりということもないんです。今では珍しい朴訥な雰囲気も、風の盆の醍醐味。

「風の盆」の開催時期は?

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出典:水橋IMOさんの投稿

本祭は9月1~3日の3日間。地方と踊り手たちが各町内を練り歩く「町流し」、地方を中心に輪をつくって踊る「輪踊り」を、各町内を回って一つひとつ見ることになります。

「風の盆」の開催時期は?1206097

出典:シロエビさんの投稿

基本は踊りを鑑賞するだけですが、地区によっては輪踊りに参加させてくれるところもあるので、運がよければ一緒におわらが踊れます♪特に上新町には大輪踊り会場ができるので、踊りたい人はぜひ!

「風の盆」の開催時期は?1208458

出典:シロエビさんの投稿

そのほかに、特設会場での「演舞会」というのがあります。こちらは有料ですが、各町内が入れ替わりおわらを踊ってくれるので、初めての人には特にオススメです!

前夜祭も大盛り上がり!

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出典:30-06さんの投稿

2017年は本祭がちょうど土日と重なるので、例年以上の混雑が予想されます。気軽に楽しめる前夜祭も盛り上がるので、ゆっくり鑑賞したい人にはコチラがオススメ。

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出典:シロエビさんの投稿

8月20~30日の毎日、八尾曳山展示館では「おわらステージ」が催されます(有料)。踊り方教室や過去の風の盆の映像を上映したりと、お祭りの基礎を知るのにぴったりです!最後には、毎日交代で各町内の演舞を観ることができ、これだけでもかなりの満足感が得られます。

時代とともに進化する「おわら」の歴史

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出典:suzakid77さんの投稿

いつはじまったのか明確ではない「おわら風の盆」ですが、確かな歴史とともに踊りは時代に沿うように変化してきました。

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出典:てれてれ坊主さんの投稿

もとは民衆の喜びの踊りとして賑やかなものだったのが、大正時代に、町の芸者たちによって現在の「おわら」の原形に練り直されました。また昭和に入ると、「越中八尾民謡おわら保存会」の初代会長による働きかけによって、「おはら」は一流文化として成長していきます。

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出典:yokomonさんの投稿

気品に溢れ、琴線に触れるような旋律と所作が心に残る「おわら」。時代のなかで自然にできたわけでなく、まさに〝文化〟として、この地域で大切に育まれてきたものなのですね。

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出典:30-06さんの投稿

ちなみに「おわら」の語源は、当時流行した唄の文句「おわらひ(大笑い)」、豊作を祈願した「大藁(おおわら)」からきたなど諸説あるそうです。

注意しておきたいこと

時間に注意!

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出典:ゆうあおいさんの投稿

本祭の9月1・2日は15時から、最終日の3日は19時からスタートし、23時まで(と公式では決まっていますが、実際は明け方まで)続きます。逆にいえば昼間、特に最終日は夜まで踊りを見ることはできません。

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出典:30-06さんの投稿

また、踊り手の夕食タイムとして17:00~19:00は踊りが一斉に中断されます。観光客もこの時間に食事休憩をするのがベストなようですが、飲食店はどこも混むので、予め屋台などでお弁当などを買っておくのが吉です。

9月1日/2日:午後3:00~午後11:00(但し、午後5:00~午後7:00は夕食・休憩のため踊っておりません。)

9月3日:午後7:00~午後11:00(午後7:00以前は、一切踊っておりません)

出典:総合案内:おわら風の盆|越中八尾 おわら風の盆

フラッシュ厳禁!

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出典:ヒロトさんの投稿

提灯の繊細な灯りと、厳粛な空気を纏った「おわら」。雰囲気を大切にするため、フラッシュ撮影は控えましょう。暗黙の了解として遵守したいマナーですね。

宿泊は困難!?

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出典:てれてれ坊主さんの投稿

人口の少ない地域にその何倍もの観光客が訪れるわけですから、宿泊地は少し遠くを覚悟した方がよさそうです。ホテルを探すなら早めの計画を!

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出典:水橋IMOさんの投稿

裏技としては…明け方まで非公式で続くおわらを鑑賞し、始発で帰るという手もあります。体力や予算と相談して決めましょう。

雨天中止

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出典:m.hさんの投稿

雨の場合、楽器を守るため一切の行事が中止となります。順延はなく、ステージのチケットは払い戻しすることになります。台風の多い季節のお祭りなので、天に祈るしかありませんね…。

土日の混雑に注意

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出典:水橋IMOさんの投稿

2017年は本祭が週末と重なり、例年より混雑が予想されます。そんなときこそマナーをしっかり守り、ゆったりとした気持ちで楽しみたいですよね。計画をしっかり立てて、余裕をもって鑑賞しましょう。

アクセス

電車は富山駅~越中八尾駅~猪谷駅間で臨時快速列車が出ています。定期バス(富山地方鉄道)は、富山駅~八尾間の臨時便が出ます(夜間)。会場には臨時のタクシープールも増設されます。注意したいのが、自家用車はオススメしないという点です。会場は小さな町なので、できる限り公共交通機関を使いましょう。移動が大変そう…という人は、クルーズ船やバスのツアーに申し込むという手も。

※実際の交通機関の運航状況については、その年によって変更される可能性があるので、各交通機関にご確認ください。

おわりに

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出典:アイガットリズムさんの投稿

歴史のなかで育まれてきた、静寂と哀切の「おわら風の盆」。今年の夏は、ちょっと切なくなるお祭りで締めくくるのもステキです。町にそっとお邪魔する気持ちで、幻想的な夜を過ごしてみてはいかがでしょう?

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