2022年09月08日
【奈良】静寂な世界へ包み込まれる庭園巡り。奈良の日本庭園4選
対称美を重視する西洋式庭園とは違って、自然のままの美しさとその調和を大切にする日本庭園。奈良には様々な形の日本庭園が残り、整備されています。大仏や鹿もいいけれど、奈良にある日本庭園を訪れて、庭園の様々な形と凝縮された自然の素晴らしさを堪能しませんか?
目次
日本庭園は、日本の美を凝縮している、とも言われますね。自然との調和を美と考える日本庭園の形は時代ごとに異なります。歴史の古い奈良には、様々な形の日本庭園が存在します。今回は、作られた時代と形の異なる奈良の日本庭園を4つご紹介していきます。
平城宮の南東端にひっそりとたたずむ特別名勝「東院庭園」。1967年に発掘された奈良時代の庭園の遺構*を調査し、そのデータを元に、庭園があった場所に遺構を傷つけない形で復元しました。東西60m、南北60mの池があり、これを中心に構成されている東院庭園。自然の風景をモチーフとする日本庭園の原型とされています。
*遺構ー住居跡・寺院跡などで、発掘によってわかる建物を支える石や柱穴などのこと。その配置や様式を知る手がかりとなる。
庭園南東の角にある『隅楼』と呼ばれる建物。逆L字形の特殊な平面配置と柱が正八角形であったことがわかっています。地面には柱が沈まないような念入りな工夫がされていることから楼閣*(ろうかく)と推測。屋根には美しい鳳凰が飾られています。
*楼閣ー楼は2階建て以上の建物,閣は見晴し用の建物のこと。
中央にある建物は、東院庭園の「正殿」で、宴会や儀式の際に中心となった場所と推定されています。東側には池に張り出す露台がつき、ここから東岸と平橋で繋いでいます。池は、曲水の宴*(きょくすいのうたげ)を行えるように入り組んだ形になっています。
*曲水の宴ー水の流れのある庭園などでその流れのふちに出席者が座り上流より流れてくる酒盃が、自分の前を通り過ぎるまでに和歌を詠む神事
庭園北東の建物は、池のそばに建つ休憩所のようなイメージで、南北の壁がないあずまやになっています。こちら渡る橋は、反橋(そりばし)になっています。発掘調査から橋の構造もわかるそうです。
東院庭園の詳細情報
一番のみどころは平安時代末期に作られた庭園。平安時代末期から鎌倉時代初めごろに流行した浄土式庭園で、国の名勝に指定されています。
金堂や仏堂など寺院建築物の前に大きな池が広がる様式は浄土式庭園の特徴で、視覚的に極楽浄土の世界を再現しようとしています。蓮の花が咲き乱れる季節は、まさに極楽浄土の世界を彷彿とさせます。
池の中央と西側には中島があります。かつて中央の島には橋が架かっていました。池には美しい錦鯉が優雅に泳いでいます。
円成寺の庭園はどの季節も美しいですが、特におすすめは秋の紅葉の頃。奈良市内より高いところにあるので、早めに見ごろを迎えます。
里の詳細情報
里
近鉄奈良 / 麺類、甘味処
- 住所
- 奈良県奈良市忍辱山町1273 忍辱山 円成寺
- 営業時間
- [月] 11:00 - 15:00 [火] 11:00 - 15:00 [水] 定休日 [木] 11:00 - 15:00 [金] 11:00 - 15:00 [土] 11:00 - 15:00 [日] 11:00 - 15:00
- 定休日
- 水曜日
- 平均予算
- ¥1,000~¥1,999
円成寺の詳細情報
慈光院は、石州流茶道の開祖として知られる片桐石州こと貞昌(さだまさ)が建立した臨済宗大徳寺派の寺院。石州の設計によって、境内全体が一つの茶席として造られ、周囲の風景・景観と調和するように構成されています。国の名勝史跡に指定されている庭園のある書院を中心に紹介します。
開け放たれた書院からは、美しい庭をながめることができます。禅寺の庭園では石を用いることが多い中、石をあまり使わず色々な種類の木々を用いた庭になっています。これも、茶席の庭として季節ごとの風情を楽しめるようにした石州の演出です。
慈光院の拝観料にはお抹茶接待が含まれており、書院の広間で一服できます。お抹茶をいただきながら美しい庭園をゆっくりとながめる時間は至福の時。
手水鉢は元来は神前・仏前で口をすすぎ身を清める水の入った器を指し、茶室に入る前に手を清める手水鉢は特に「つくばい」と呼ばれます。石州は、書院・茶室に添えて手水鉢・つくばいを造っています。慈光院には4つありますが、すべて重要文化財。素材・形状・配置すべてに石州のこだわりや演出をうかがうことができます。
慈光院の詳細情報
依水園は、奈良公園内、東大寺と興福寺の間にあります。奈良を代表する池泉(ちせん)回遊式庭園*で、江戸時代に作られた前園・明治時代に作られた後園の二つの庭園からなります。国の名勝に指定されています。
*池泉回遊式庭園-中心に大きな池があり、その周囲に園路を巡らして、築山(つきやま)・池の中の小島・橋などで風景を再現した庭園。
江戸時代前半、奈良晒*(ならざらし)を扱う御用商人だった清須美道清が、別邸として『三秀亭(さんしゅうてい)』を移築し、茶室『挺秀軒(ていしゅうけん)』を建てました。前園は周りから隔絶された空間になっており、水音を聞くこともできるほどの静寂な世界を体験できます。
*奈良晒-奈良周辺で産出した麻織物。江戸時代は武士の裃(かみしも)・町人の礼服などに使用される最高級の布だった。
明治時代に実業家・関藤次郎によって、茶の湯と詩歌の会を楽しむために作られた築山式の池泉回遊式庭園です。若草山や東大寺南大門・春日奥山・御蓋山(みかさやま)など奈良らしい風景を借景としています。
『柳生堂(やぎゅうどう)』は、廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)*で取り壊しの危機にあった柳生一族の菩提寺「芳徳寺」のお堂を買い取り、移築したものです。
*廃仏毀釈-明治維新の神仏分離によって起こった仏教をしりぞける運動で、多くの仏像や寺院の建物が破壊された。
依水園 三秀の詳細情報
依水園 三秀
近鉄奈良 / 日本料理
- 住所
- 奈良県奈良市水門町74
- 営業時間
- [月] 10:30 - 15:30 [火] 10:30 - 15:30 [水] 10:30 - 15:30 [木] 10:30 - 15:30 [金] 10:30 - 15:30 [土] 10:30 - 15:30 [日] 10:30 - 15:30 ■ 営業時間 ランチ11:30~13:30(LO) 喫茶10:30〜15:30(L.O) ※シーズン無休(4~5月、10~11月)以外は火曜日定休日
- 平均予算
- ¥1,000~¥1,999
依水園(寧楽美術館)の詳細情報
奈良の日本庭園、いかがでしたか。奈良では、時代の異なる、形の異なる、様々な日本庭園を楽しんでいただけます。今回ご紹介できなかったところにも、素敵な日本庭園がありますよ。奈良にある日本庭園を訪ねて、大仏や鹿だけではない、奈良の魅力を感じていただければ幸いです。