2022年09月23日
東京で寄席を楽しむ場所6選!カジュアルに楽しめる穴場あり
この記事にたどりついたあなたは、多少なりとも落語に興味がある方だとお見受けします。確かにアニメ(『昭和元禄落語心中』)やテレビドラマ(『赤めだか』)、映画(『の・ようなもの のようなもの』)で、落語が立て続けにとりあげられていて、ブーム再燃の兆しがありますよね。今回は、そんな落語初心者のあなたが「寄席」デビューできるようにエスコートしていきやしょう!
目次
「寄席」というと通常は落語を思い浮かべますが、寄席で見られる演芸はそれだけではありません。もともとは講談(こうだん)や浪曲(ろうきょく)、義太夫節(ぎだゆうぶし)などの演芸を観客に見せるための常設の興行小屋のことを「寄席」といい、日本で初めて専門的な寄席が開かれたのは、寛政10年(1798年)のことだと言われています。
現代の寄席では漫才や手品、曲芸なども披露され、全体としてバラエティーに富んだプログラムになっており、一日中楽しむことができちゃいます。
このようにバラエティーに富んだプログラムの寄席ですが、やはり中心となっている演目は落語。寄席の一連のプログラムのなかで落語は何席も登場します。実はこの登場順には意味があって、落語家の上下関係と深いかかわりがあるのです。
まず一番最初に登場する落語家は「前座(ぜんざ)」と呼ばれます。「前座」は見習いを経てようやく寄席の楽屋に入ることを許された落語家のことで、あまりなじみのない顔がほとんどでしょう。
そのあとは色物と呼ばれる漫才や手品などをあいだに挟みながら、やがて「二ツ目(ふたつめ)」の落語家が登場します。「前座」のときは着流しだったのが、「二ツ目」になると紋付や羽織を着られるようになり、見た目は一人前の落語家です。
そうこうしているうちに最後にようやく「真打ち(しんうち)」の登場。「真打ち」とは、寄席で一番最後に出る資格をもつ落語家のことで、弟子をとることも認められています。テレビなどで顔なじみのある落語家のほとんどは「真打ち」なんですよ。
なんだか寄席って面白そうだな。ちょっとでも関心をもっていただけたのなら、思い立ったが吉日。さっそく寄席に行ってみましょう!
寄席は基本的に毎日やっています。ほとんどの寄席が昼夜2部制をとっていて、昼の部が正午前から、夜の部はだいたい午後5時前くらいから始まることが多いです。2部制と言っても映画の封切館のように入れ替え制ではないので、一日中いることだってできちゃいますよ。ちょうど映画館でたとえるならば名画座。あのゆる〜い雰囲気が大好きだという方にはすぐに気に入っていただけるはずです。
寄席のプログラムは、上席(毎月1日~10日)、中席(毎月11日~20日)、下席(毎月21日~30日)で内容が変わっていきます。寄席に行く前に必ずチェックしましょうね。
さて、寄席に行く日も決めました。あとはチケットだ! いえいえ、寄席の場合、特別興行でないかぎりチケットの予約は必要ありません。そんなしちめんどくせえこと、江戸っ子がするはずがありません。行きたい寄席が決まったら、何も考えずにそこに向かいましょう。
寄席の入り口には「木戸(きど)」があります。券売所のことですね。ここで入場料である「木戸銭(きどせん)」を支払うと、寄席に入ることができます。なんだか銭湯みたい。木戸銭は通常の興行で2000円から3000円程度になります。これで一日中いられるなら安いってなもんだ!
さて、寄席に入りましたよ。今日は人気の真打ちが登場するので、すでにたくさんのひとで賑わっています。ではここで、寄席のマナーをひととおりご紹介しましょう。そうじゃないと、気が散ってせっかくのおもしろい落語が心から楽しめませんからね!
初心者がまず気になるのは、どんな服装でいったらいいのか。でも寄席にドレスコードなんてものはありません。服装は自由です。ジャケットを着たり、着物を着ていく必要はありません。ジーンズなどの普段着でもまったくオーケーです。ただ、寄席によっては着物割引などもあるので、足繁く通うようになったらチャレンジしてみても楽しそうですね。
入退場のタイミングについてですが、寄席は好きなときに入場して好きなときに退場してかまいません。再入場はお断りのところが多いようですが、基本的に客席は出入り自由です。ただし演者と観客が一体となって作り上げる場が寄席なのですから、緊急時以外は高座の切れ場(演目と演目のあいだ)に出入りできるとよいでしょう。
寄席は客席での飲食も自由です。これも映画館といっしょですね。売店で売られている助六寿司やサンドイッチ(どちらも前を向いたまま食べられるスグレモノ!)も寄席の楽しみのひとつです。ただし、あんまり音やにおいのする食べ物は、周囲の迷惑になりますのでやめましょう。アルコール飲料は禁止のところもありますので要確認ですよ。
以上のように、寄席のマナーとはいってもどれもこれも最低限のマナーです。開演中の撮影や録音、携帯電話の使用、大声でのおしゃべりが御法度なのは、いわずもがなですね。肝心なのは、演者や観客が一体となって作り上げている雰囲気を壊さないようにすること。あとは肩肘張って窮屈なことは言わないで、寄席の自由な空間を満喫しちゃいましょう。これでもう寄席デビューは怖くないですよね?
無事に寄席デビューをすませて、2度、3度と寄席に通うようになったら、とにもかくにもごひいきの落語家を見つけるようにしましょう。「イケメンだから」「声がしびれる」「自分と同じ名前だ」きっかけはなんだってかまいません。そうしてひいきの落語家を見つけたら、そのひとの師匠、兄弟子、弟弟子、一門へと関心を拡げていけばいいのです。
落語はいままさに「生きている芸能」なのですから、いまのわたしたちが未来につなげていかなくてはなりません。いわゆる落語の名人たちだって、その時代のリアルタイムに楽しんでくれるファンに支えられて、歴史に名を残す落語家となったのですからね。
それではお待たせしました。東京で寄席を楽しむことのできるスポットをご紹介しましょう。まずは歴史と伝統のある定席(1年365日、休まずいつでも落語の公演を行っている寄席)4席から。
東京のど真ん中、居酒屋やバーが軒を連ねる新宿三丁目にひときわ異彩を放つ江戸風情の建築物。それが「新宿末廣亭」です。昭和21年に「新宿の大旦那」と呼ばれた北村銀太郎が設立した、都内唯一の木造寄席です。
館内は中央に117椅子席、左右に38ずつの桟敷席があります。桟敷席では座布団が借りられますよ。1階が満席の場合に開放される2階席からは、歴史的建築がすみずみまで見渡せます。昼・夜各席十数組のうち、2/3ほどが落語、あとは漫才、奇術、曲芸、俗曲など様々な色物を楽しむことができますよ。
お得情報としては、土曜日恒例の深夜寄席を木戸銭1000円で観ることができます。眠らない街・新宿ですから、寄席がはねてもまだまだ飲みに行けるのがうれしいですよね!
新宿末廣亭の詳細情報
安政4(1857)年、初代鈴木龍助が開設した「軍談席本牧亭」という講釈場が母体となり、いまに続くのが「鈴本演芸場」です。ペリーが浦賀に来航したのが開設の4年前だと聞けば、いかに歴史のある寄席であることがおわかりになるでしょう。その後、明治9年になって町人にも苗字が許されるようになり、鈴木姓を名乗った席亭(寄席のオーナーのことです)が、鈴木の「鈴」と本牧亭の「本」を組み合わせて「鈴本演芸場」という名前になったと言います。
「鈴本演芸場」は昭和46年に落成したビルの中にあります。当初はビルの中の寄席ということで、風情がないなどと言われたりもしましたが、ホールのように見やすく、聞きやすく、何より気軽な寄席と評判です。
寄席の出番の用語については、まず「さら」。一番最初に上がる芸人さんを指します。次の「くいつき」は、仲入りのすぐ後に出る芸人さん。客席がザワついていてやりにくい出番ですが、色物の方や腕のいい若手噺家が務めることが多いそうです。最後に「膝替り」ですが、番組の最後「トリ」のすぐ前に出る芸人さんことを言います。真打ちの芸を引き立てたり、時間を調整したりと気を使う難しい出番。こういった用語も知っているとより楽しめますね。
鈴本演芸場の詳細情報
「池袋演芸場」の創業は1951年。その後、1990年から改築のために3年ほど休業しましたが、1993年9月から再開し、店舗の入れ替わりの激しい池袋にあっていまでも寄席を楽しむことができます。改装前は、畳席で桟敷がありましたが、現在は92席の椅子席になっています。
「池袋演芸場」の特徴は2つ。ひとつは木戸銭の安さ。毎月21日から30日のあいだは昼の部のみですが2500円均一で楽しむことができます。また、中高生対象の学生服割引や、浴衣&着物割引などの各種割引料金もあるので、気軽に行きやすいですね。
そしてもうひとつの特徴は、演者ひとりひとりの持ち時間が長いこと。ひいきの落語家さんがいて、なんども足繁く通いたい人にはピッタリの寄席です。
池袋演芸場の詳細情報
昭和39(1964)年、「浅草フランス座」を増築してつくられた4階と5階に誕生したのが「浅草演芸ホール」です。かつての東京オリンピックが開催された年のことです。その後、昭和46(1971)年に場所を1階に移し、いまでは国内外の観光客がもっとも訪れるとされる、活気のある寄席となりました。
オープン以来、10日替わりで落語協会と落語芸術協会が交互に公演を行っています。落語のほかにも、漫才、漫談、コント、マジック、紙切り、曲芸、ものまねなど、バラエティーに富んだ番組をご用意しています。萩本欽一やビートたけしなどを輩出した、お笑いの殿堂「浅草演芸ホール」にぜひ足を運んでみましょう。
かつてテレビドラマ「タイガー&ドラゴン」でその出入り口が劇中で何度も使われていたので、見覚えのある方も多いのではないでしょうか。ちなみに、ドラマ中の場内のシーンは「新宿末廣亭」を模して造られたセットだったそうですよ。
浅草演芸ホールの詳細情報
浅草演芸ホール
- 住所
- 東京都台東区浅草1-43-12 (六区ブロードウエー商店街中央)
- アクセス
- つくばエクスプレス浅草駅徒歩すぐ/東京メトロ銀座線田原町駅徒歩5分
- 営業時間
- 11:40〜21:00 (演目により変動あり)
- 定休日
- 年中無休
- 料金
- 企画により異なる
まだ落語のことをよく知らないし、本格的な定席にデビューする前に、まずは雰囲気だけでも味わってみたいな。そんなあなたには、都内で落語をカジュアルに楽しめるお店をご紹介しましょう。
古本街として有名な神田神保町。その中心地にある神田古書センターの5階にあるのが「らくごカフェ」。月曜日から土曜日までの11時から18時は通常のカフェとして営業をしています。夜が高座の時間。本の街らしく、店内には落語関連の本やCD、DVDも充実していますよ。
もちろん「らくごカフェ」というからには、店内には高座が設置されています。寄席がおこなわれてない時間は実際に上がって記念写真を撮ることだってできます。そして夜になると、「らくごカフェ」は50席のライヴ・スペースに早変わり。演者の息づかいを間近で感じられるのは、小さい箱ならではの醍醐味です。
隠れた人気メニューなのが、お茶菓子付きの中国工芸茶。軽食はドライカレーのホットサンドが人気です。アルコールもあるので、古本屋めぐりの後にひと息つくのにもいいですよね。
らくごカフェの詳細情報
秋葉原で落語と料理を楽しむ、落語初心者も安心のお店が「落語・小料理 やきもち」です。美味しい日本酒や女将の手料理をいただきながら、落語などを楽しめるお店なんですよ。
基本的に火曜の夜に公演が行われます。本公演以外に、二ツ目になって5年目くらいまでの若手の2人会が楽しめる「こんがり公演」も。将来の真打ちを今から要チェックできちゃいます。
お通しは6品盛り合わせと贅沢♪お酒が進みそうな内容です。女将が1人で切り盛りしているので、4名以上は要予約。美味しいお酒と料理で寄席を楽しめるなんて幸せですね。
落語・小料理 やきもちの詳細情報
いかがでしたか? 寄席はひとりでじっくりその風情を味わうのもいいですし、みんなでお弁当持参で楽しくやるのもいいものです。ぜひとも、お近くの寄席に足を運んでみてくださいね!