2016年04月15日
朽ちゆく幻の橋、北海道遺産の「タウシュベツ川橋梁」
北海道上士幌町(かみしほろちょう)の、糠平湖(ぬかびらこ)にある「タウシュベツ川橋梁」。季節や湖の水位により姿を変え、ときに水没して、その姿が全く見えなくなってしまうことから”幻の橋”と呼ばれています。圧倒的な存在感と、周囲の大自然とのコントラスト、かつては賑わっていたという時代を想い出させもする静かなる佇まい・・・そのすべてが美しい景観となって存在しています。北海道遺産にも指定されている、一見の価値のあるスポットです。
タウシュベツとは"樺(かば)の木のたくさんある川"という意味です。その名前の美しさもさることながら、山々と原生林に囲まれた景観とあわせた佇まいの美しさは、ギリシアやローマの古代遺跡にすら匹敵します。山々の雪解けの頃になると、湖の水位は上昇します。タウシュベツ橋梁は、6月くらいから少しずつ湖に沈みはじめます。やがて10月には完全に水没してしまうことから、幻の橋と呼ばれるようになりました。タウシュベツ橋梁は、季節により、湖の水位により、さまざまな表情を見せてくれます。
もっとも有名なシーンです。水のある時には、静謐な湖面にその姿を映し、眼鏡橋とも呼ばれます。もっとも遭遇することの難しいシチュエーションとも言えます。
季節により、またダムの水位により、水没してまったく見られなくなることもあります。冬は、湖の水位も低く比較的その全容を観ることのできる季節といえます。クマも冬眠中ですので、露出したタウシュベツ橋へ近づきやすい季節であるとも言えます。
やがては朽ちてなくなっていくのかも知れません。だからこそ訪れたい!観ておきたい!心に留めておきたいと思うのかも知れません。
近づくほどにその大きさを知り、その大きさに圧倒されます。
アイヌ語で"樺の木の多い川"の意味の通り、林立する白樺とのコントラストは、季節を問わずに美しいものです。白樺は更新の早い樹として知られています。森林構成の先駆的役割をしめす成長の早い白樺と、朽ちようとする遺跡とのコントラストは見事なものです。
まったく水がなくなったとき、ローマ遺跡のような全容が現れます。
広大な原生林の中を、線路が通り、列車が走っていた時代がありました。1987年に廃線となった日本国有鉄道(現JR)の士幌(しほろ)線は、北海道十勝地方の中心地である帯広から北へ、音更(おとふけ)、士幌を経由し、上士幌町十勝三股駅を終点として折り返し運行していました。1939年に開通したその線路は、豊富な森林資源を切り出し、運ぶためにつくられました。切り出された丸太は、音更川やタウシュベツ川に架かる線路の上をトロッコ列車で運ばれ、炭や薪などの燃料、線路の枕木、さまざまな資材として使われました。十勝三股駅周辺には、林業に携わる人々が多く住み、活気のあるひとつの街を形成していました。戦争が始まる前の話です。
戦後も、復興のために森林資源は必要でした。十勝三股界隈も賑わい続けましたが、すぐに燃料革命が起きます。薪や炭、石炭の時代から電気の時代へと、日本全体が大きく変わっていく時代。1955年、タウシュベツ川を含む十勝川水系音更川に発電用のダムが建設されました。ダム湖は「糠平湖(ぬかびらこ)」と名付けられ、水力発電基地として活躍しています。風情のあった線路は「糠平湖」の中に沈んでしまいました。士幌線は「糠平湖」を避けて新しい線路を、東側に敷きました。現在の三股林道は、かつての線路あとになります。
林業の衰退とともに、住んでいた人々も少しずつ減り、やがて十勝三股の街はなくなりました。そして1987年士幌線は廃線になりました。今では、林道入り口付近にお洒落なログハウスの喫茶店「三股山荘」があるのみです。
訪れる季節によって、姿の変わるタウシュベツ橋ですが、同じ姿でいることは二度とありません。象の足のような橋脚は、少しずつ崩壊が進んでいるからです。保存のための修復運動と、自然のままに朽ちゆく姿を見守っていきたいという方々と、意見が分かれています。
三股山荘の詳細情報
三股山荘
上士幌町その他 / カフェ、喫茶店
- 住所
- 北海道河東郡上士幌町字三股8
- 営業時間
- [月] 11:00 - 16:30(L.O. 16:00) [火] 定休日 [水] 13:00 - 16:00 [木] 11:00 - 16:30(L.O. 16:00) [金] 11:00 - 16:30(L.O. 16:00) [土] 11:00 - 16:30(L.O. 16:00) [日] 11:00 - 16:30(L.O. 16:00) [水] (喫茶メニューのみ)
- 定休日
- 火曜日
- 平均予算
- ¥1,000~¥1,999
帯広方面から向かうと、タウシュベツ橋梁より手前、糠平湖畔の温泉街の少し手前にあります。タウシュベツ橋梁の見える場所からは車で5分ほどです。士幌線の資料やアーチ橋群の写真などが展示されています。またタウシュベツ橋梁へのアプローチに関する詳細な情報もここで入手できます。
上士幌町鉄道資料館(旧国鉄士幌線の資料展示、北海道遺産コンクリートアーチ橋梁群の案内業務)|資料館・美術館|施設ガイド|北海道上士幌町
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まるで糠平湖へ滑り降りるような景観の、標高1230mにある糠平温泉スキー場は、糠平湖畔の市街地、糠平源泉郷から徒歩3分というアクセスの良さ。標高の高い内陸の寒冷地という、スキー場としてはこれ以上ない恵まれた環境、雪質の良さには定評があります。世界有数の、上質なパウダースノーを求めて、多くのスキー客が訪れます。
スノーマシンを使用しているため、常にゲレンデコンディションは最高のレベルに保たれています。また子供専用のキッズゲレンデがあり、小さな子どもも安心してソリや雪遊びを楽しむことが出来ます。小学生以上を対象に、スキーとスノーボードのスクールを開講。初心者からハイレベルなスキーヤーまで楽しむことのできるスキー場です。営業期間は12月下旬から3月下旬、麓のぬかびら源泉郷では、スキーパックなどのお得な宿泊プランもありますよ。
タウシュベツ橋梁を訪れるら、ぜひ寄っていただきたいのが、ぬかびら源泉郷です。帯広方面からは、タウシュベツ橋梁より手前、糠平湖畔、国道273号線沿いに、温泉宿やお土産屋さんが軒を連ねています。温泉は無味無臭の透明なナトリウム塩化物泉、さまざまな効能の中でも美肌効果に特にすぐれています。もちろんどの宿も源泉かけ流し、宿ごとにそれぞれ工夫を凝らし趣きも違うので、温泉巡りなど、多様な楽しみ方ができます。
中でもお薦めが「中村屋旅館」。和気あいあいの家族的な雰囲気が人気の宿です。古い大型ホテルだった建物を少しずつ自分たちで手を加え、こじんまりとした旅館ふうに改装していったそうです。まだまだ改装途中とか。手作りゆえの不思議な仕掛けが建物のあらゆるところに見受けられます。
フロントでお出迎えしてくれるのはワンちゃんです。いつもいるわけではありませんが、愛犬家にはたまらない宿です。犬もいっしょに泊まれる部屋もあります。
中村屋の詳細情報
いつかは朽ちてなくなってしまうのかもしれないタウシュベツ橋梁。巨大な橋の存在そのものが、それを語っているようにも見えます。タウシュベツ橋梁を中心とする廃線跡のアーチ橋は、国道273号線を走ると、山間のあちこちに見受けられます。鉄道の歴史は北海道の歴史、湯けむりの上がるぬかびら源泉郷とハイクラスなスキー場、点在するアーチ橋と湖上に佇むタウシュベツ橋梁は、開拓の歴史と人々の暮らし、そして自然との折り合いとのちょうど良いバランスの取れた状態といえます。現存するうちに訪れてほしいスポットです。