2016年04月01日
知る人ぞ知る東京B級グルメ! 十条のソウルフード「からし焼き」の店6選
安価でお腹いっぱい食べられ、庶民的でおいしい「B級ご当地グルメ」。日本各地で地域振興のために活用されていますが、東京にもいくつかあるってご存じでしたか? もんじゃ焼き、スタミナ丼、レバフライ、油そば、八王子ラーメン……などなど。今回はそんな東京B級グルメの中でも圧倒的に知名度の低い、でも一度食べたひとに中毒者が続出するという北区十条の「からし焼」をご紹介します。
「からし焼」は豚肉を使用した料理。その名前からは、薄切りにしたロース肉に和辛子か唐辛子のタレをつけて焼いた料理を想像してしまいますが、実際の姿はだいぶ違います。
これが、からし焼きの見た目です。豆腐チゲのような赤々とした汁気の多い料理。これで「焼き」とはなんとも腑に落ちない感じですが、東京では汁気の多い牛鍋のことだって「すき焼」と呼んでるのですから、あんまり神経質に考える必要はないかもしれませんね。
からし焼の一般的なつくり方も、すき焼とよく似ています。よく熱した鍋で豚肉を炒め、その残り油を利用して今度は豆腐を炒めます。これに昆布とカツオでとったダシ、醤油やみりんがベースとなったタレ、生姜や唐辛子を加えて煮込みます。このときに一緒に加えられるのが、驚くほど大量のニンニク! 味が整ったら豚肉と豆腐をいっしょの器に盛って、薬味のネギとキュウリを添えます。目にあざやかな真っ赤な見た目と、ニンニクの強烈な香りが食欲をそそりますよ。
スープをひとくちすすると、唐辛子の辛さよりも先にタレの甘みとうま味を感じます。そのうま味は、さまざまな具材と調味料から生み出された足し算的なおいしさ。しかしそれをじっくり味わっている間もなく、辛さがあとを追って襲ってきます。夏場だったら汗だくになること必至ですが、ただ辛いだけではなく、うま味のベースがしっかりしているので、ひとくち、もうひとくちとスープを飲んでしまいます。味がよくしみこんだ豚肉や豆腐もやわらかく煮込まれていて、薬味のネギとキュウリのシャキシャキ感がいいアクセントになっています。
残ったスープを白飯にかけて一滴残らずいただけば、もう心も体もぽっかぽか!
そんな「からし焼」ですが、発祥の地は後ほどご紹介する東京・北区の東十条にある「とん八」というお店だと言われています。このお店の先代が、東京オリンピックの翌年にあたる1965年に開発したのが最初なのだそうです。
当時の日本は高度経済成長の波に乗ってひとびとの食の好みも多様化し、また冷凍食品やレトルト食品の進化もあって、いままで外食でしか食べられなかったハンバーグやオムライスなども家庭の食卓にのぼるようになっていました。そんな時代背景にあって、からし焼は、当時流行していた「ショウガ焼」と区別するために「からし焼」と名付けられ、誕生したのです。
やがて「とん八」のからし焼きのレシピは他店にも広まりました。また、持ち帰り用の鍋でテイクアウトをしてからし焼を食べた近所のひとたちも、今度はその味をなんとか自分の家で再現しようと試みました。こうして十条では、一般家庭でもからし焼が食べられるようになったのでした。
ではなぜ東京の北区、しかも十条界隈だけでこのように盛んにからし焼が食べられるようになったのでしょうか。はっきりとした理由はわかりませんが、もともと韓国料理・朝鮮料理の飲食店が多く、唐辛子を多用する料理に対する親和性が高かったことがあげられるかもしれません。また、職人の多い街であり、大きな商店街や演芸場などもあって、人びとが自然に集まる大衆酒場が数多く存在してきたことも無関係ではなさそうです。
それでは、東京でからし焼が食べられるお店をご紹介しましょう。まずは「からし焼御三家」と言われている十条の3店舗からです。
「からし焼御三家」で最初にご紹介するのは、さきほども話題にあがったからし焼発祥のお店「とん八」です。お店があるのは、JR京浜東北線の東十条駅から徒歩2分のところ。2014年の春から店舗リニューアルのためにしばらくお休みしていましたが、すぐに再オープンし、現在も多くのリピーターでにぎわっていますよ。
この「とん八」は、そのむかしは名前のとおりの豚カツ屋さんだったそうです。ところがあるとき、まかない飯として作ったからし焼をためしにお客に出してみたところ、豚カツよりも人気が出てしまったのだとか。以来、いつの間にかからし焼専門のお店になってしまいました。
お店のメニューは、豚バラ肉を使った定番の「からし焼」のほかに、肩ロースを使用した「からし焼ロース」、タレはいっしょで豆腐の代わりに野菜炒めが入った「南ばん焼」、マヨネーズのたっぷりとかかった「ポテトサラダ」など。ライスやお新香、みそ汁もありますが、セットメニューではないのでそれぞれ単品でオーダーしてくださいね。
店内は細長い造りになっていて、カウンター席のみ。目の前に厨房があるので、調理をしている様子がよく分かります。「とん八」のからし焼は、大量のラードで豚バラ肉をまず炒め、皿に盛ります。
次にその鍋に出汁を張り、一升瓶に入った秘伝のタレを注ぎます。ここに大量の粉唐辛子を入れ、大きめに切った絹ごし豆腐を投入。さらに大量のすりおろしニンニク、生姜、砂糖などを入れて味の調整をし、仕上がったら先ほどのバラ肉の上にかけます。
「とん八」のからし焼の特徴は、他店にはないガツンとくる味付けにあります。強烈なラードの香り、すりおろしたニンニクと唐辛子、刻みネギからなる重層的な辛さ、それらとバランスを保つための、みりんや砂糖の甘さ。人目も気にせず気の済むまで何度でも白飯をおかわりして、胃袋の中にかき込みましょう。
「とん八」で食事をしていると、近所のひとたちがお鍋を持ってしばしば来店します。テイクアウトの注文もかなり多いのです。このお店が街の人からこよなく愛されているということがよく分かりますね。
#寄席チカじゃない食べ歩き
— 神田真紅@講釈師 (@hakuchi97) 2016年2月25日
東十条・とん八。元祖からし焼。十条のソウルフード。豚肉と豆腐の大蒜甘辛煮込。料理の最中、物凄い炎!火柱立つ中焼かれた豚肉が超旨い。タレと豆腐が抜群にご飯に合う。大蒜濃い味は胡瓜と葱でサッパリさせて。 pic.twitter.com/RjfMZ8SbMR
とん八の詳細情報
とん八
東十条、十条、王子神谷 / 郷土料理
- 住所
- 東京都北区東十条3-17-9
- 営業時間
- [月] 11:30 - 14:00 17:00 - 20:00 [火] 11:30 - 14:00 17:00 - 20:00 [水] 11:30 - 14:00 17:00 - 20:00 [木] 定休日 [金] 11:30 - 14:00 17:00 - 20:00 [土] 11:30 - 14:00 17:00 - 20:00 [日] 11:30 - 14:00 17:00 - 20:00
- 定休日
- 木曜日
- 平均予算
- ¥1,000~¥1,999
- ¥1,000~¥1,999
「からし焼御三家」の2軒目は、同じく東十条にある「みとめ」。「とん八」とは線路をはさんで反対側の、駅から徒歩3分のところにあります。
「とん八」がからし焼専門店なら、こちらのお店はからし焼も食べられる大衆酒場のおもむき。お客さんは焼き鳥を片手にチューハイやホッピーを飲みながら、お酒のアテにからし焼を注文しています。
「みとめ」のからし焼の具は、豚バラ肉、絹ごし豆腐、タマネギ、ニンニク。トッピングの長ネギはなく、その代わりにタマネギをバラ肉といっしょに炒めてあるんです。そしてニンニクはすり下ろしたものではなく、つぶしただけの丸のままのニンニクを使用。トッピングは薄く輪切りにしたキュウリだけです。
タレの味ですが、最初は甘口でだんだんと辛さがこみ上げてくるのはほかのお店といっしょ。でも辛さがほんの少しひかえめになっているので、辛いもの好きの常連さんは「辛め」で注文しているそうですよ。
盛りつけ方が豆腐の上に肉を載せている感じなのが、この店のからし焼の特徴。スープにひたっていないぶん、からし「焼き」感が一番強いお店かもしれません。
きょうは久しぶりに残業。下町のチューハイが飲みたくて途中下車。みとめで食べた東十条のB級グルメ からし焼きがメチャうまかった pic.twitter.com/0K8YAn1CqX
— やまがら文庫(^o^)/ (@heno3ban) 2014年2月4日
みとめ
閉業や休業等の理由により食べログに店舗情報が存在しないか、一時的な障害で店舗情報が取得できませんでした。
「からし焼御三家」最後の1軒は、東十条の隣の街、十条にある「味の大番」。JR埼京線の十条駅から徒歩5分のところにあります。
専門店の「とん八」、大衆酒場の「みとめ」と比較した場合、このお店の雰囲気はずばり「学生食堂」。からし焼がイチ押しのお店ですが、それ以外の定食メニューも各種取りそろっています。とはいえ、やはりこのお店でも一番出るメニューは「からし焼定食」。なんでもからし焼の誕生当時、「とん八」の創業者がその完璧なレシピを伝えたのは、このお店だけなんだそうですよ。
店内はテーブル席が5つ。お昼時は学生や近所で働く人たちですぐ満席になってしまいます。ひとりで訪れる場合には、相席を覚悟してくださいね。
このお店の「からし焼定食」には、ライスと味噌汁、お新香がついてきます。
肝心のからし焼ですが、スープがさらっとしていてマイルドな味(といっても、辛さは御三家で一番かもしれません)。ニンニクは「とん八」のようにすりおろさず、「みとめ」のように丸のままで入っているので、その後の予定が気になるというひとは残すことだってできちゃいます(でも本当はそんなもったいないことしないでいただきたいです!)。
スープがさらっとしているので、具を食べたあとも器にたくさん残ってしまうと思います。そんなときは、セットのライスにスープをかけて、甘辛ダシのうまみを最後まで楽しんでみてください。
「味の大番」では、容器代150円を別途支払えば、タッパーでお持ち帰り用にしてもらうこともできますよ。
今宵も楽しく飲むわたくし〜十条大番からし焼w pic.twitter.com/dNuUz5ZdNA
— 中野美砂子 (@momoco_ex) 2015年3月21日
味の大番の詳細情報
味の大番
十条、東十条 / 食堂、居酒屋
- 住所
- 東京都北区上十条2-11-10
- 営業時間
- [月] 11:00 - 14:30 17:00 - 21:00 [火] 11:00 - 14:30 17:00 - 21:00 [水] 定休日 [木] 11:00 - 14:30 17:00 - 21:00 [金] 11:00 - 14:30 17:00 - 21:00 [土] 11:00 - 14:30 17:00 - 21:00 [日] 11:00 - 14:30 17:00 - 21:00 ■ 定休日 第三木曜日
- 定休日
- 水曜日
- 平均予算
- ~¥999
- ~¥999
さて、ここからは「御三家」には入りませんが、都内でもなかなか見かけることのない、からし焼を食べられるお店をご紹介していきましょう。
十条駅北口のすぐそばにある洋食のお店「ランチハウス」。ここでもからし焼を食べることができるのですが、メニューをみてもそれらしい料理は見当たりません。
それもそのはず、このお店でのからし焼の呼び名は「ポーク唐し豆腐」。Bランチとして提供しているそれが、実はからし焼定食なんです。
このお店の「ポーク唐し豆腐」は御三家に比べるとだいぶあっさりとしていて、B級感が弱いです。そのぶんニンニクの香りや全体の辛さもソフトになっているので、女性の方や辛いものが苦手な方には良いかもしれません。
トッピングにはネギとキュウリではなく、カイワレ大根が使われているのもこのお店の特徴。なんと、豚肉の代わりに唐揚げを入れてもらうことも可能ですよ。
ランチハウス
閉業や休業等の理由により食べログに店舗情報が存在しないか、一時的な障害で店舗情報が取得できませんでした。
この「ランチハウス」は十条のほかにも江古田など都内に何店舗かあるようなので、お近くに見つけた場合には「ポーク唐し豆腐」がないかどうかチェックしてみてくださいね。
ランチハウスの詳細情報
ランチハウス
江古田、新桜台、新江古田 / 食堂、洋食
- 住所
- 東京都練馬区栄町4-7
- 営業時間
- [月] 11:00 - 15:00 17:00 - 21:30 [火] 11:00 - 15:00 17:00 - 21:30 [水] 11:00 - 15:00 17:00 - 21:30 [木] 11:00 - 15:00 17:00 - 21:30 [金] 11:00 - 15:00 17:00 - 21:30 [土] 11:00 - 15:00 17:00 - 21:30 [日] 11:00 - 15:00 17:00 - 21:30 ランチ 11〜15:00 ディナー 17〜23:00
- 平均予算
- ¥1,000~¥1,999
- ~¥999
十条からそう離れていない北区・赤羽。赤羽岩淵駅から徒歩1分のところにあるラーメン店「支那そば 大陸」でもからし焼を食べることができます。
こちらのお店ではからし焼を定食でも単品でも注文することができますが、定食の場合にはライスと中華スープ、お新香と納豆がついてきます。
肝心のからし焼の味ですが、店内の張り紙には「激カラ」とあるものの、御三家と比べるとそんなに辛くはなく、ただ、中華料理店らしくニンニクの風味を存分に楽しめるような味付けがなされています。とはいえ、ニンニクの量自体はほかの中華系メニューと同じくらいの少なめな量なので、ランチで食べても後のことが気にならないのはうれしいですね。
豚肉は薄切り肉を使用。きざんだ鷹の爪が使われていたり、トッピングに茹でたほうれん草が載っていたりするのが特徴です。
支那そば 大陸の詳細情報
支那そば 大陸
赤羽岩淵、赤羽、志茂 / ラーメン、餃子
- 住所
- 東京都北区赤羽1-49-9 イデアコーポ 1F
- 営業時間
- ■ 営業時間 11:00~14:30 17:00~21:00
- 平均予算
- ~¥999
- ~¥999
北区から遠く離れて、23区からも遠く離れて、青梅市の工業団地付近で近隣で働くひとたちの胃袋を満たしているのが「味里 別館」。こんな場所でもからし焼が食べられているんですね。青梅線沿線に何店舗かある、昼は定食を出し、夜は居酒屋になる「味里」というお店のうちのひとつです。
手羽先の唐揚げや海老カツ、スタミナ丼などのご当地グルメと並んで「からし焼き」は人気メニューのひとつ。なんでも、リピーター率が90%なんだそうですよ。
こちらのからし焼は居酒屋らしく鉄板で提供されます。汁気がほとんどなく、「からし焼」と聞いてイメージする料理に一番近いのかもしれません。キャベツやもやしなどの野菜炒めの上に焼いた豚ロースが載り、甘辛ダレがかかっていて、フライドガーリックがトッピングされています。
いかにも呑兵衛さんが好みそうなその外見。辛さはかなり本格的で、これならお酒も知らず知らずのうちにすすんでしまいそうですね。
味里 青梅新町店の詳細情報
味里 青梅新町店
小作 / 食堂、居酒屋
- 住所
- 東京都青梅市新町8-10-3
- 営業時間
- [月] 11:00 - 15:00(L.O. 14:30) 17:00 - 23:00 [火] 11:00 - 15:00(L.O. 14:30) 17:00 - 23:00 [水] 11:00 - 15:00(L.O. 14:30) 17:00 - 23:00 [木] 11:00 - 15:00(L.O. 14:30) 17:00 - 23:00 [金] 11:00 - 15:00(L.O. 14:30) 17:00 - 23:00 [土] 11:00 - 15:00(L.O. 14:30) 17:00 - 23:00 [日] 11:00 - 15:00(L.O. 14:30) 17:00 - 23:00 ■ 定休日 第2月曜日
- 平均予算
- ¥1,000~¥1,999
- ¥1,000~¥1,999
以上、都内でからし焼が食べられるお店をご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか? 一度食べてやみつきになったら、今度はまだ食べたことのない友だちを誘って「からし焼エヴァンジェリスト」として東京発B級グルメの味を周囲に広めてみてくださいね。でもくれぐれもニンニクの匂いにはご注意あれ!