2022年10月24日
【全国】しみじみと味わい深い「花の寺」11選。歴史や花の持つ意味に思いを馳せて
全国各地には、「花寺」と呼ばれるお花の名所があります。椿や藤といった日本らしい花や、蓮華、沙羅双樹といった仏教に縁がある花を、風情あふれるお寺で楽しむ……。きっと、心が豊かになる体験になるはずですよ。この記事では、椿、桜、牡丹、ツツジ、藤、菖蒲など、様々な種類の花を楽しめる全国の「花寺」をご紹介します。ぜひ、お出かけや旅の参考にしてみてくださいね。
目次
公園や植物園、あるいは飲食店、ホテルのロビーなど、お花を見られる場所はいろいろとありますが、“お寺”という非日常的な空間で見るお花は、またひと味違います。風情あふれる境内で、しみじみと季節のお花を楽しんでみませんか?
歴史を感じる仏教建築や、しっとりと苔むす庭園の中で咲く花々は、独特の美しさがあります。また、仏教のシンボルフラワーといわれている蓮(ハス)など、花の意味やいわれを調べてみると、知的好奇心がくすぐられます。
この記事では、椿、桜、牡丹、ツツジ、藤、菖蒲など、様々な種類の花の名所をご紹介します。ぜひ、お出かけや旅の参考にしてみてくださいね。
京都の人気スポット、哲学の道の近くにある「霊鑑寺(れいかんじ)」。いつもは非公開ですが、春と秋だけ特別拝観が行われます。春の特別拝観で鑑賞できるのは、境内のあちこちに咲き乱れる大ぶりの花、椿。
京都市指定天然記念物の「日光椿」をはじめ、30種以上の椿の名木があります。艶やかな苔に椿が散る様子は、まるで絵画のよう。竹や鉢、瓦などを使った生け花もセンス抜群で、赤・ピンク・白のかわいい花をお寺の風情と共に楽しめます。見ごろは例年3月下旬~4月上旬です。
「霊鑑寺」は、代々皇室の女性が住職を務めたお寺。御所人形をはじめ、皇室ゆかりの貴重な品々が残されています。ビロードのような苔に覆われた庭園も見どころ。椿とあわせて、普段は見られない寺院をゆっくり眺めてはいかがでしょうか。
椿が描かれたおしゃれな御朱印帳や、見開きページいっぱいに椿やご本尊のイラストが描かれた美しい御朱印も見逃せません。参拝の際は、ぜひゲットしたいですね!
霊鑑寺の詳細情報
日蓮上人入滅の霊場として知られる「池上本門寺」は、桜の名所としても有名です。仁王門へ続く階段は桜の木に囲われており、満開になるとまるで桜のトンネルのようになります。広い境内にもたくさんの桜の木が植えられており、仏教建築と桜のコラボレーションを楽しむことができますよ。
境内には、国の重要文化財に指定されている五重塔があります。朱塗りの塔と桜のコラボレーションも美しいですね。売店「花峰」には、桜の花を使った「はちみつ櫻ジャム」も。お土産にぴったりのひと品です。
「池上本門寺」は幕末の出来ごとに関係の深い場所でもあります。新政府軍の本陣がおかれた土地であり、境内の庭園では、西郷隆盛と勝海舟との江戸城無血開城の会見が行われました。武士の生き様に例えられる桜の花を愛でつつ、幕末という、武士の世が終わっていった時代に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
池上本門寺 本殿の詳細情報
古代日本の里・奈良県明日香村にある「岡寺(おかでら)」。境内には四季折々の花が咲きます。中でも、約3000株の石楠花(シャクナゲ)と数百株の牡丹(ボタン)が見事! 例年ゴールデンウィークごろには、「華の池~水面に浮かぶ天竺牡丹~」というイベントが開催されます。
池と手水舎にたくさんの天竺牡丹(ダリア)が浮かぶ様子はうつくしいもの。鮮やかな花が、参拝者を歓迎してくれているようですね。「シャクナゲの道」では、花を愛でながらゆったりと散策を楽しむことができます。境内の落ち着いた空気と季節の花に癒されるひと時を、ぜひ過ごしてみてはいかがでしょうか。
「岡寺」はおよそ1300年前に始まった、日本で最初の“厄除け霊場”といわれています。境内には、昔この地を荒らしていた悪い龍を封じたという、神秘的な池も。歴史あるお寺には様々な見どころがあり、知的好奇心がくすぐられます。お花と合わせて、境内めぐりもじっくりと楽しんではいかがでしょうか。
岡寺の詳細情報
岡寺
- 住所
- 奈良県高市郡明日香村岡806
- アクセス
- 橿原神宮前駅東口 バス 27分 「岡寺前」下車、徒歩10分。 飛鳥駅 バス 19分 「岡寺前」下車、徒歩10分。
- 料金
- 【料金】 大人: 400円 大学生: 400円 高校生: 300円 中学生: 200円 備考: 小学生以下無料、団体割引50名以上
すり鉢状の地形の中央に佇む「塩船観音寺(しおぶねかんのんじ)」。例年春になると、丘の斜面がツツジの花で覆われます。その数およそ1万7000本! 丸く整えられたツツジの株は、マリモが転がっているようでかわいらしいです。
例年ゴールデンウィークに見ごろを迎えるツツジ。丘の斜面には散策路があり、花を間近で楽しむこともできます。訪れる際は、開花の時期に合わせて開催される「つつじ祭り」を要チェックです。
ちなみに「塩船観音寺」の開祖は、人魚を食べて不老不死を得てしまった悲しい伝説を持つ尼僧・八百比丘尼といわれています。お寺に残る伝説や歴史も興味深いもの。境内には国指定重要文化財の「山門」や「阿弥陀堂」など様々な見どころがあるので、じっくりと参拝してみてはいかがでしょうか。
塩船観音寺 本堂(観音堂)の詳細情報
埼玉県本庄市にある「長泉寺」は、室町時代に建立された歴史あるお寺。“東国花の寺・百ヶ寺”に選ばれている花の名所でもあります。こちらは、例年ゴールデンウィークごろに見られる藤棚が見事。お堂の周りがうす紫色のカーテンに囲まれます。
特に有名なのが、樹齢650年といわれる「骨波田の藤」。長いもので1.5メートルもある花房が風にそよぐ様は、本当に美しいです。藤の花は見上げるように観賞するので、まるで花に包み込まれているような気分に。上品で柔らかい雰囲気の花に包まれていると、自然と気持ちが安らぎますよ。
平安時代ごろには、貴族が好む高貴な花とされていた藤の花。日本最古の和歌集・万葉集にも、藤花について詠んだ歌が多くあります。たおやかに咲く藤の花には、人の心を動かし、想像力をかきたてる力があるのかもしれませんね。
長泉寺の詳細情報
600年以上の歴史を持つ「永澤寺(えいたくじ)」は、美しい自然に囲まれた広大なお寺です。広々とした庭園を有していて、季節によって美しい花々を楽しめます。特に約300万本もの菖蒲が咲く「花しょうぶ園」は、寺院を代表する美しさです。山の緑、凛とした古刹、気品ある花菖蒲の姿。どこか昔ながらの日本を思わせる風景に癒されます。
例年6月初旬から7月にかけて咲く菖蒲。香りの強い菖蒲は“邪気を払う”とされていて、昔の人々は頭に飾ったり、お風呂に入れて菖蒲湯にしたりしたのだそうです。庭園で花の香りに包まれていると、身のまわりの悪いものごとを取り払ってくれそうですね。菖蒲が美しく描かれている、お寺オリジナルの御朱印帳もすてきです。
「永澤寺」は、“花と仏と蕎麦の里”ともいわれています。昼夜の温度差が激しいこの地域では、風味の良い蕎麦が育つのだとか。永澤寺の僧侶たちは、古くからこの蕎麦を食べて修行に励んできたそうです。境内で自慢の蕎麦を味わったり、蕎麦打ち体験をすることもできますよ。
※2022年の「花しょうぶ園」は、園内整備のため休園予定。詳しくは公式サイトにてご確認ください。
永澤寺の詳細情報
京都・宇治の山にある「三室戸寺(みむろとじ)」は紫陽花(あじさい)の名所。まっすぐに伸びた杉の木の間を埋めるように、およそ1万株もの紫陽花が咲きます。山のひっそりとした雰囲気が、花の美しさを際立たせます。
例年6月上旬~7月上旬は、境内の「あじさい園」が開園されます。“幻の紫陽花”とよばれる「七段花」を始め、50種もの紫陽花を楽しめるのも魅力。梅雨に映えるとりどりの花は、雨の日の美しさや楽しみ方を気づかせてくれます。
三室戸寺の歴史は古く、平安時代に書かれた「源氏物語」にその名が登場しています。境内には物語ゆかりの石碑や、作中の男女の歌をとりあげた「恋おみくじ」も。平安ロマンスに思いを馳せて、源氏物語めぐりを楽しんではいかがでしょうか。また、恋愛成就の「ハートアジサイのお守り」も人気。“ハート型の紫陽花を見つけると恋が叶う”といわれているそうですよ。
三室戸寺の詳細情報
極楽浄土をイメージして造られたという名庭園がある「法金剛院(ほうこんごういん)」。こちらでは、池を埋め尽くす蓮(ハス)の花を楽しめます。仏教のシンボルフラワーである蓮は、寺院の景観にしっくりとなじみます。
蓮は早朝に開花し、午後になると閉じてしまいます。そこで法金剛院では、例年花の見ごろになると朝7時に開門して「観蓮会(かんれんえ)」を開催。夏は猛暑日が多い京都ですが、早朝はやや涼やか。朝の凛とした空気の中で、ガラス細工のように美しい蓮を愛でるなんて、すてきな体験ですね。
泥の中から真っ直ぐに伸び、清らかで美しい花を咲かせる蓮は、仏の悟りの象徴といわれています。「蓮華の五徳」という経典では、極楽浄土に生まれることができる人の特徴を、蓮が咲いて散っていく様子になぞらえて説かれています。経典に少し触れてから蓮の姿を眺めると、何か感じるものがありそうですね。
法金剛院の詳細情報
伊勢神宮の鬼門を守る「金剛證寺(こんごうしょうじ)」。“伊勢神宮へお参りする人々はこのお寺にも参詣するのが習わし”だったといいます。6月~8月の早朝には、太鼓橋がかかる「連間(つれま)の池」が睡蓮(スイレン)でいっぱいに。
仏教の花は「蓮華(れんげ)」という言葉で表現されますが、これは蓮(ハス)と睡蓮(スイレン)の両方を指します。こちらの池に咲くのは睡蓮の花。葉も花も、水面上にピタッと張り付くように成ります。平らな水面に花をこぼしたようで、蓮とはまた違う風情があります。
睡蓮の池を渡る太鼓橋は、此岸(しがん)と彼岸(ひがん)の堺とされています。此岸は迷いや欲望がある世界、彼岸は苦しみのない悟りの世界のこと。此岸側から来た参拝者は睡蓮の美しさにふれ、心のモヤモヤを一時でも忘れられるのではないでしょうか? 穏やかな気持ちで、ご本尊や天照大神が祀られた彼岸側のお堂をお参りできそうですね。
金剛證寺の詳細情報
枯山水庭園や水琴窟があり、侘び寂びの世界観に満ちた「東林院(とうりんいん)」。普段は非公開の寺院ですが、沙羅双樹(サラソウジュ)が咲く初夏に特別公開が行われ、一般の方も拝観することができます。
「沙羅の花を愛でる会」と名付けられた特別公開では、花を愛でるだけでなく、精進料理や抹茶、お茶菓子なども楽しめますよ。
仏教の三大聖木とされている沙羅双樹は、朝に咲いてその日の夕方には散ってしまう儚い花です。古典「平家物語」冒頭のフレーズは、そんな花の様子を世の無常に例えているのだとか。しっとりと苔むす庭園にぽつぽつと落ちた可憐な花の姿は、何か心に訴えかけてくるものがあります。
東林院の詳細情報
南信州の町に佇む「嶺岳寺(れいがくじ)」。観光名所という感じではなく、地元の人に親しまれる、ひっそりと心地良い雰囲気のお寺です。こちらでは、ハッとするような赤色の、彼岸花(ヒガンバナ)の群生を見ることができます。
その数およそ3万株。中には、白色の珍しい種類もあります。やや怖いイメージがある花ですが、お寺の心地良い雰囲気の中で見ると印象も少し変わります。群生地の中にお地蔵様や仏像もあり、そのやさしい顔立ちにホッと心が和みますよ。
彼岸花には様々な呼び方があります。代表的なのは曼珠沙華(マンジュシャゲ)。仏教にまつわる名称で、天上の花という意味があるそうです。また、毒を持つため田んぼの畔に植えて動物よけにしていた、飢饉の備えとして栽培されていた、ともいわれています。怖がられたり、尊ばれたり、実用的だったり。彼岸花が持ついくつもの顔を調べてみると、昔の生活や人々の心を感じられます。
嶺岳寺の詳細情報
泥の中から美しく咲く花、朝に咲いて夕方には散ってしまう花。お寺という特別な空間に咲く花々は、ただ美しいだけではなく、人の心に様々な感情を呼び起こさせます。しみじみと味わい深い「花寺」でのお花見、ぜひ一度楽しんでみてはいかがでしょうか。