貴婦人気分で優雅な時間を。非日常的な気分に浸れる全国のクラシックホテル8選

最近はLCCの参入や新幹線の開通によって以前よりも遠方への旅行が気軽に行えるようになりました。移動にかかる費用と時間が少なくなったことによって、旅先での過ごし方の幅も広がり、週末旅行を行う人も増えたのではないでしょうか？

そこで今回ご紹介したいのが、100年以上に渡って訪れる人を魅了し続けているクラシックホテル。クラシックホテルとは、第二次世界大戦前に創業したものや、今でも創業当時の建物で営業しているホテルのこと。クラシックホテルでは海外旅行が一般的でなかった明治時代から多くの外国著名人を受け入れ、最高級のおもてなしを提供してきました。

伝統と歴史を大切にするクラシックホテルは建物はもちろん、家具調度品や料理のレシピまでを大切に受け継ぎ続け、昔と現在で変わること無く人々を魅了し続けています。普段の雑踏から離れて明治の古き良き時代を満喫できるクラシックホテルへの旅をご紹介していきます。

東京駅から電車で2時間ほど、栃木県日光市にある「日光金谷ホテル」。1873年に日光東照宮に務めていた金谷善一郎が自宅の一部を主に外国人の宿泊施設として開放したことが始まりです。1902年に栃木県内で初めて電話を取り入れたり、当時では最先端だった洗濯機や暖房設備の導入を行うなど、日本のホテル界をリードする重要な役割を果たしてきました。

金谷ホテルには、相対性理論を提唱したアルベルト・アインシュタインや英国皇太子殿下が1922年に、1937年にはヘレン・ケラーと彼女の家庭教師であるアン・サリヴァンなど、偉大な功績を収めた人々が多く訪れています。

建物は明治時代にタイムスリップしたかのようなクラシカルな雰囲気。日光の静かな自然の中に佇んでいるので、現代の喧騒から離れてゆったりとした時間を楽しむことができます。館内には展示コーナーも設置されており、多くの著名人によって書かれたサインが見られるのも歴史を感じる素敵なポイント。大切に保管されていた陶器や銀器といった調度品なども見ることができます。

まだ西洋料理が一般に知られていなかった時代から、食堂では本格的な洋食を提供しており、創業当時のレシピのまま受け継がれてきた食事もこのホテルの魅力の一つ。各国の著名人が舌鼓を打った百年カレーや大正コロッケットなど、時代を超えて愛されるメニューをぜひ味わってみてください。

東京都内から車でおよそ2時間半、関東屈指の温泉地として知られる草津にある「ホテル一井」の創業はなんと江戸時代中期。当時は一井旅館という名で始まり、300年以上たった現在でも「ホテル一井」として親しまれています。ホテルの目の前には毎分4600リットルが湧き出るという湯畑があり、湯けむりと硫黄の香りが情緒たっぷりの景色を作り出しています。

多くの研究者が政府の招きによって来日した明治時代、ここ草津は外国から訪れる研究者たちに大変人気でした。特に東大医学部の前身であった東京医学校で研究をしていたベルツ博士はこのホテルを大変気に入り、明治11年頃から数回訪れたそう。ホテルでの滞在を楽しむだけでなく温泉の分析や効果的な入浴方法などの研究に勤しんだといわれています。

300年以上経った今でもホテルの窓からは迫力の湯畑を見ることができます。日本医学に貢献したベルツ博士と同じ景色を見ていると思うと、なんとも感慨深いものがありますね。

クラシックホテルの代表とも言える「帝国ホテル 東京」は東京都日比谷区、皇居外苑からすぐのところに位置しています。1890年に海外から訪れる賓客をもてなすために「日本の迎賓館」としてオープンしたこのホテルは、各国の政治を結ぶ国際交流やビジネスの場として、重要な役割を果たしてきました。

イギリスのエリザベス女王陛下やマリリン・モンロー、チャールズ・チャップリンが来泊したり、皇太子殿下、雅子妃殿下の結婚の儀が執り行われたりと、日本の歴史を語る上で欠かせない場となっています。

重厚感溢れる建物で、館内は品格があり、落ち着いた雰囲気やスタッフの振る舞いの優雅さも日本を代表するクラシックホテルの誇りを感じることができます。

建物は1968年に現在の姿へと変わりましたが、前身は、フランク・ロイド・ライトが設計した世界の建築芸術史上の傑作ともいわれた建物でした。今でも「旧本館（通称ライト館）」の面影を館内の「オールドインペリアル バー」で感じることができます。

東京駅から東海道新幹線で約1時間10分、車でも1時間半程の神奈川県箱根市にあるのが「富士屋ホテル」。1878年に日本初の本格的なリゾートホテルとして開業した富士屋ホテルは、1893年から外国人客専用のホテルになった歴史を持ち、英国皇帝アルバート陛下や皇子チャールズ殿下など、海外からの著名なゲストが宿泊するホテルとして使用されました。

他にはチャールズ・チャップリンやヘレン・ケラー、各国の大臣や首相も来泊。一般営業が再開した後は、昭和天皇や皇后両陛下も訪れています。

今日でも使われている本館は1891年に建てられました。非常に頑丈な建物で1923年に起こった関東大震災でもガラス戸一枚も割れることはなかったそう。本館の館内ではたくさんの彫刻や装飾を至るところで見ることができ、何度訪れても新しい発見が出来ると人気です。

また1936年に建築された別館「花御殿」の千鳥破風の屋根や、そこに施された装飾も大変美しく、和洋折衷の独特の世界を生み出しています。自然の中に佇む美しい建物で古き良き時代にタイムスリップしたかのような時間を過ごすことができます。

※2024年6月現在、大規模改修・改築工事の為休館中です。再開については公式HPをご確認ください。

東京駅から北陸新幹線で1時間半、車では2時間半程、長野県北佐久郡にある万平ホテル。このホテルの起源となったのが1764年に開業した旅館「亀屋」です。元々は旅館でしたが、外国人客の接待に力を入れていたため、欧米風のホテルに改装し1896年に「萬平ホテル」へと改名しました。

戦争の時代にはソビエトやトルコの大使館員が疎開をしたり、米軍将校向けの宿泊基地になったりと激動の時代に翻弄されながらも営業を続けたこのホテル。ジョン・レノンも亡くなる前年までこの地で4度の夏を過ごしたそうです。

時代を感じるクラシックホテルでありながらも温かみがあり親しみやすさを兼ねそなえている万平ホテル。比較的リーズナブルな値段設定のお部屋からアンティークでラグジュアリー感の溢れるお部屋まで選べるのも高い人気を誇る理由の一つです。また軽井沢の緑あふれるところにあるため、どの季節に訪れても美しい景色と澄んだ空気を楽しむことができます。

「長楽館」は京都駅からタクシーで10分ほどの京都府の東山区にあります。1909年に国内外からの賓客をもてなすための迎賓館として建設された長楽館は、西園寺公望や伊藤博文、大隈重信、山縣有朋といった明治を代表する著名人からイギリスの殿下、そしてアメリカの実業家ジョン・ロックフェラーなどが訪れたそう。

見事な建物と家具調度品は1986年に京都市有形文化財の指定を受けています。長楽館は京都駅からのアクセスが非常に良いにも関わらず、隣接する円山公園の自然を見渡せる立地にあります。この癒しの環境が、多くの著名人が心落ち着ける場所として選んだ理由かもしれませんね。

建物の建築様式は、外観がルネッサンス、応接間はロココ、食堂はネオ・クラシック、窓やステンドグラスはアール・ヌーヴォーと多くの芸術様式が盛り込まれています。これら以外にも水墨画のある中国風の部屋や書院造りの和室などもありますが、不思議と全てが調和した美しい空間になっています。

1890年に保養所として吉水園が開設され、1900年に洋式の「都ホテル(旧名称)」になりました。その敷地内の庭園に大正の総理大臣であった清浦奎吾の別荘として1925年に建てられたものが佳水園。ここではホテルに居ながらにして日本旅館の伝統的なサービスを受けることができます。

数奇屋造り建築の傑作と言われている佳水園は昭和の名建築家、村野藤吾の設計。白砂敷きの中庭は平安神宮の庭園などで知られる小川治兵衛の長男白楊（はくよう）が手がけたもので、ホテルにいながら美しい日本を感じることができます。

京都駅からはタクシーで15分程のところにありますが、京都駅内に専用のコンシェルジュデスクがあり、そこで観光相談や荷物の預かりをしてくれるので京都での時間を有効に使うことができるのもこちらのホテルの魅力です。預けた荷物はホテルまで運んでおいてくれるのでラクチンです。

日露戦争が終わった際、日本に来遊する外国人が急増したことに伴って政府の宿泊施設整備の支援も増加し、このことが奈良ホテル創立のきっかけとなりました。1909年に営業を開始した奈良ホテルはテニスコートやミニゴルフ場を併設し、国賓や皇族が宿泊するための迎賓館に準ずる施設として国の厚い保護下で運営されるようになりました。

それ故、当時ではたいへん珍しかった客誘致のためのポスターを制作したり、セントラルヒーティングが導入されたりと当時の他ホテルとは一線を画していたそうです。満州国の皇帝、愛新覚羅溥儀やヘレン・ケラー、オードリー・ヘップバーン、ダライ・ラマ14世などが宿泊したり、国内の著名人であれば佐藤栄作や司馬遼太郎も利用したというこのホテルは、現在でも「西の迎賓館」と呼ばれています。

明治の面影をそのまま残すクラシックな内観にはアインシュタインが演奏したというピアノがあったり、普段の雑踏を忘れてノスタルジックな雰囲気を満喫することができます。

多くの著名人が滞在したクラシックホテル。当時は一般の人が訪れることはかなり難しいことでしたが、現在ではさまざまなプランが用意されているので比較的気軽に訪れることが可能になりました。

伝統と歴史を大切にするクラシックホテルは当時の宿帳が展示されていたり、多くの家具類がそのまま使われていたりするので、まるで明治時代の要人になったかのような体験をすることができます。

街には高層ビルや大型のショッピングセンターが次々と建設されていく中、クラシックホテルで流れる空気は明治の時代そのもの。観光地を目指す旅も良いものですが、国内外の著名人が過ごした場所を100年後に楽しむというスタイルの旅もおすすめです。