【京都】有名建築家が手がけたホテル＆旅館6選｜美しい空間に酔いしれるステイを

出典：tomoenさんの投稿

「清水寺」「伏見稲荷大社」「金閣寺」「平等院」など、有名スポットが目白押しの人気観光地「京都」。歴史的な建造物はもちろん、四季折々に表情を変える豊かな自然も見どころで、一年を通して楽しむことができます。創業数百年という老舗も多く、長年愛され続けているグルメや伝統工芸の技を取り入れたアイテムも満載。ほかにはない魅力がぎっしりと詰まっていて、何度でも訪れたくなる場所です。

とにかく見どころが多い京都では、観光スポットに気を取られて宿選びがおざなりになりがち。ホテルや旅館の数も多いので、「どこを選んだらいいかわからない！」と思っている人も多いかもしれません。そんなあなたにおすすめなのが、「建築」にこだわって宿選びをすること。実は、京都には有名建築家が手がけた美しいホテルや旅館がたくさんあるんです。

意匠が凝らされたファサードやパブリックスペースに圧倒されたり、洗練されたデザインの客室にうっとりしたり。美しさと居心地のよさが同居する空間で過ごすひとときは、まさに非日常。観光を済ませて宿に戻ってきてからも特別な気分で過ごすことができるので、忘れられない旅になること間違いなしです♩今回は、有名建築家が手がけた京都の名建築宿をご紹介します。

京都駅から無料のホテルバスで25分ほど、最寄りの蹴上駅からは徒歩2分ほどの場所にある「ウェスティン都ホテル京都」。明治23（1890）年の創業から数々の国賓や著名人が宿泊してきた格式高いホテルです。現在の本館は、日本のモダニズム建築を代表する建築家・村野藤吾氏の設計により昭和35（1960）年に完成したもの。完成から半世紀以上が経過しているのにもかかわらず、まったく古びない独特の造形美に胸を打たれます。

館内にある京都最大級のスパ施設「華頂」も、村野氏の意匠が感じられる空間のひとつ。2021年の改修では、村野氏が得意としていた曲線のフォルムがオマージュとして多用されています。湯舟に注がれているのは、ホテルの敷地内から掘削された天然温泉「京都けあげ温泉」。やわらかなカーブを眺めながら温泉で体をあたためていると、身も心もゆるゆると解放されていきそうです。

こちらは、村野氏の設計により昭和34（1959）年に完成した別館「佳水園(かすいえん)」。「戦後の数寄屋造り建築の傑作」と名高い、村野氏の代表作のひとつです。高低差のある地形に沿って客室が配置されていて、銅板葺きの薄い屋根がリズミカルに重なって見える姿は圧巻…！観光スポットを訪れたときのように、何枚も写真を撮りたくなってしまいます。

ロビーの内部デザインは、今も完成当時のまま。配置されているラウンジチェアとローテーブルも村野氏が設計したものです。村野氏特有のデザインとされる座面の低いチェアに腰かけてみると、白砂の中庭を絶妙なバランスで眺めることができます。ここでゆっくりとお抹茶をいただいて、心を研ぎ澄ますのも贅沢なひとときです。

現在の客室は、村野氏の精神を受け継ぎながら、よりゆとりのある空間にリニューアルされたもの。座椅子に座って窓の外に目をやると、客室が周囲の景色とつながっているかのような感覚になります。すべての客室に高野槇の浴槽が設置されているので、好きなときに温泉を楽しむことも可能。小さな書斎では、備え付けの万年筆で手紙や日記を書いて過ごすのも素敵ですね◎

国際会館駅から徒歩7分ほどの場所にある「ザ・プリンス 京都宝ヶ池」は、四季折々の自然があふれる「宝ヶ池公園」に面して建つホテルです。竣工は昭和61（1986）年。村野藤吾氏の晩年の作品のひとつで、村野氏はホテルの完成を見ることなく亡くなってしまったのだそうです。建物は楕円形のドーナツのような形をしていて、流れるような曲線が公園の風景や洛北の山並みに違和感なく馴染んでいます。

ゆるやかな曲線に沿うように配置されたロビーも、高貴でありながらどこかやわらかい印象です。ところどころに和を思わせるモチーフが取り入れられていて、オリエンタルなムードが気分を盛り上げてくれます。こちらのロビーをはじめ、客室やレストランなど、細部にまでこだわった村野氏の意匠をホテルコンシェルジュが案内してくれる館内見学ツアー（宿泊者限定・要予約）もあるのだそう。毎月2回実施されているので、詳しくはホテル公式サイトを確認してくださいね。

ここで特に注目したいのが、ロビーの中央にある大きな螺旋階段。こちらは、ホテル1階から地下2階までの吹き抜けになっています。「階段の魔術師」の異名を持ち、階段の建築に定評がある村野氏ならではの曲線美が存分に堪能できるスポットです。階段そのもののなめらかな曲線はもちろん、異素材の組み合わせや手すりの装飾など、細かなこだわりがいっぱい。飽きることなく、何時間でも眺めていられそうです♩

ドーナツの中央部分は中庭になっていて、建物を内側から眺めることも可能。村野建築の特色でもある角のないデザインをここでも見て取ることができます。中庭には季節の草花が植えられているので、遊歩道をぐるりと一周しながら建築と自然のコラボレーションを楽しむのも◎。敷地内の日本庭園には村野氏が手がけた数寄屋造りの「茶寮」もあるので、おさんぽがてら見に行くのもおすすめです。

さまざまなタイプが揃う客室は、宝ヶ池の自然をテーマにしたインテリアが特徴。窓の外にも豊かな緑を眺めることができて、大きく腕を広げて深呼吸したくなっちゃいます。客室によっては、隣接する日本初の国際会議場「国立京都国際会館」が眺められることも。こちらも有名建築家・大谷幸夫氏が設計した建物なので、村野氏の建築と対比しながら鑑賞するのも面白いかもしれません♪

出典：いのこりさんの投稿

烏丸御池駅から徒歩8分ほど、京都市役所前駅からは徒歩1～2分ほどの場所にある「俵屋旅館」は、江戸時代に創業した老舗旅館。「日本最高峰の旅館」とも称され、国内外のVIPに愛され続けている有名旅館です。この俵屋旅館で昭和33（1958）年に竣工した本館の増築部を設計したのが、日本を代表する建築家・吉村順三氏。その後、昭和40（1965）年に完成した新館も吉村氏が手がけたことで知られています。

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時代に合わせて改修が繰り返されてきた建物ですが、外塀や玄関、中坪などは昭和2（1927）年頃に改築された当時のままなのだそう。沓脱ぎに一歩足を踏み入れると、周りの空気がガラッと変わるのを感じるはずです。館内に飾られている優美な調度品に目を奪われつつ、お楽しみの客室に向かいましょう。

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全18室の客室はそれぞれ間取りや趣向が異なっていて、ひとつとして同じものはありません。こちらの「富士の間」は、俵屋の客室の中でも特に歴史が古く、創業当時の書院造りの風情がそこここに感じられる一室。居間、土間、庭園がゆるやかにつながっている美しい空間に、思わずため息が出てしまいます。

出典：takaboさんの投稿

こちらは、吉村氏が設計した本館の増築部にある特別室「暁翠庵(ぎょうすいあん)」。青竹に囲まれた窓の景色は、まるで一枚の屏風絵を見ているかのようです。木造では難しいとされる隅柱のない造りになっていて、ガラス戸を取り外すと自然と一体になれるような開放感に包まれます。竹で造られた濡れ縁に出て、そよ風を感じながら過ごすのもいいかもしれませんね♩

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客室でひと息ついたら、当主・佐藤年氏のご主人である故アーネスト・サトウ氏の書斎「アーネスト・スタディ」にも行ってみましょう。屋根裏部屋のような小さな空間に、選び抜かれた書籍や調度品、有名デザイナーの北欧家具などがずらりと並べられています。たくさんの「いいもの」に囲まれているだけで、なんだか自分のセンスも磨かれていきそうです◎

祇園四条駅から徒歩10分ほどの「SOWAKA(そわか)」は、もともと老舗料亭だった数寄屋建築を改修・増築したスモールラグジュアリーホテル。設計を手がけたのは、京都の町家や長屋のリノベーションで知られる新進気鋭の建築家・魚谷繁礼（うおや しげのり）氏です。深いグリーンのれんをくぐって小さな露地を抜けていくと、築100年以上の建物の息遣いが感じられてドキドキしてしまいます…！

客室は、数寄屋建築を活かした「本館」と、新たに増築された「新館」の全23室。お茶室やプライベートガーデンが付いた客室や、ペットと泊まれる離れの客室など、それぞれに趣向が異なっています。本館の「名栗(なぐり)壁」は、室内に入った瞬間、独特の削り痕が施された大きな壁に思わず息を飲む一室。伝統の「名栗」は京都の職人さんの手仕事によるもので、京都に根差した活動を続けている魚谷氏ならではのデザインです。

こちらの「ガーデンビュー スイート」は、料亭時代に「ほら貝の間」と呼ばれていた部屋をリノベーションした客室。ほら貝のモチーフがあしらわれた襖を開けると、当時の趣を感じる風情たっぷりの空間が広がっています。歴史が感じられる梁や柱はもちろん、それを引き立てる美しいインテリアにもうっとり♡檜の香りがただようお風呂でリラックスしたら、窓際の椅子に腰かけて、庭園の緑を眺めて過ごしましょ♩

新館の客室も、一室ごとに趣が異なるユニークなしつらえ。こちらの「坪庭ビュー 縁側付」は、京都の町家を彷彿とさせる長細い形をしています。窓に沿うように坪庭が設置されているので、どこにいても外の景色が眺められて開放的。縁側に腰かけて坪庭を眺めたり、お茶を飲んだりして、京都らしい和の雰囲気に浸るのもいいかもしれませんね。

世界文化遺産「西本願寺」や、昔ながらの京町家が並ぶ西洞院エリア。京都駅から徒歩10分ほど、五条駅からは徒歩8分ほどの場所に建つ「hotel tou nishinotoin kyoto by withceed(ホテルトウ 西洞院京都 バイウィズシード)」は、谷尻誠氏と吉田愛氏による人気建築設計事務所「SUPPOSE DESIGN OFFICE(サポーズデザインオフィス)」が手がけたホテルです。到着したら、ブロンズ色に輝くアプローチを探検するみたいに進んでいきましょう。

エントランスロビーは、「光」と「影」が印象的な非日常空間。ホテルのコンセプトである「奥」にちなんで、京都の持つ「奥深さ」が空間として表現されています。中央に鎮座しているテーブルは、京都の和紙を何層にも重ねて仕上げられたアートワーク。そっと触れてみると、京都の伝統や文化の奥深さが感じられるような気がします。

客室は、昔ながらの京文化が感じられる和モダンな雰囲気。障子から漏れる光や格子が創り出す影から、空間の広がりが感じられるようにデザインされているのだそうです。こちらの「プレミアム ルーム」も、インテリアや照明づかいがとってもスタイリッシュ。広々とした畳の小上がりがあるので、日中の観光で疲れた体をゆっくりと癒すことができますよ♪

建築だけでなく、造園、書籍、グラフィック、食などに専属のクリエイターが関わっているのも、このホテルの大きな特徴。シンボリックな「迎石(げいせき)」が迎えてくれる「cafe&bar oku(カフェ&バーオク)」では、京都ならではのフードやドリンクを味わうことができます。ここでも、京都の「奥深さ」を存分に堪能してくださいね。

烏丸御池駅直結の複合商業施設「新風館」の中にある「Ace Hotel Kyoto(エースホテル京都)」。大正時代に建てられた旧京都中央電話局を活用した「保存棟」と、新たに増築された「新築棟」から構成されているホテルです。建築デザインの監修を手がけたのは、世界的にも有名な建築家・隈研吾氏。保存棟は重厚なれんが造りをそのまま活かし、新築棟はルーバーや木組みを使った京都の街並みに馴染むようなデザインになっています。

ロビーの天井には、京都の杉材を使った隈氏デザインの木組みが。ロサンゼルスの人気デザインスタジオ「Commune Design(コミューンデザイン)」による照明とマッチしていて、アート好きにはたまらない空間です♡ほんのりと木の香りがただよっていて、隈氏のデザインの特徴とも言える木の建築美を香りでも楽しむことができます。

こちらの「ヒストリックツイン」のように、保存棟の客室はとってもクラシカルな雰囲気。インテリアや備品はこだわりの品ばかりで、ひとつ見つけるたびにうれしくなってしまいます♩Tivoli(チボリ)社製のラジオや白紙の五線譜のほか、お部屋によってはギターやレコードプレーヤーまで完備されていて驚き！和紙を使った照明など、和を感じさせるものがさりげなく置かれているのも京都ならではですよね。

畳の小上がりを備えた新築棟の「たたみスイート」は、グループでの旅行にもおすすめ。照明やランプシェード、サイドテーブルなどのオリジナル家具のほか、カップや茶筒までもがアーティストの作品で、そこにいるだけで楽しいインスピレーションが湧いてきます。建築とアートに感性を刺激されて、何か新しいことを始めたくなるかもしれませんね♪ほかにも、約98平米もある「ロフトスイート」やホテルのコンセプトが感じられるデザインが特徴の「エーススイート」など、特別感のあるお部屋もありますよ。

今回は、有名建築家が手がけた京都のホテルや旅館をご紹介しました。建築の時代やテーマはさまざまですが、どれも建築家の美意識を肌で感じることができる特別な空間です。見どころや観光スポットが多い京都だからこそ、「建築」にこだわって宿を選んでみてください。洗練された建築美に包まれて過ごす旅は、いつもとはひと味違うものになるはず。今回の京都旅行は名建築宿に泊まって、一生忘れられない思い出を作ってください♪