“時を忘れる”レトロな宿へ。大正ロマンな有形文化財の旅館5選

大正時代といえば、朝の連ドラ“ごちそうさん”でみられるようなハイカラなファッションが素敵ですよね。西洋文化を取り入れつつ和の趣もあって大正ロマンを感じます。服装だけじゃなく、建築やポスター、家具なども奥ゆかしくて、でもこだわりがあって現代に生きる私たちがみても懐かしくて、なんだかかっこいい。

せっかく泊まるなら、リアリティのある建物でトリップ感に浸りたいですよね。それなら、登録有形文化財の宿がおすすめです。歴史的にも価値があることにくわえ、建造物・再現性の難しさ・造形の規範となるなど、様々な条件をクリアして指定文化財に登録されており貴重です。レトロ好きにはたまらない、大正浪漫な宿で当時にタイムトリップする旅をしてみましょう。

秋田空港から車で約16分の「強首温泉 樅峰苑（しょうほうえん）」。大正6年に完成し、平成11年に登録有形文化財に認定された建物です。大胆かつ繊細な職人技が施された建物で、約3年の歳月をかけて完成させたものだそう。特に屋根部分は建築好きを唸らせる凝ったつくりになっています。その姿は当時のまま健在。心に迫るような風格に圧倒されますよ。

階段、天井、欄干…館内の至る部分に、宮大工の技が光ります。なかでも圧巻の光景は、玄関を入ってすぐの廊下です。なんと、16.3mもの長大な一枚通しの天然秋田杉が使われているんです。よくみると、木の継ぎ目がないことに気がつくはず。これだけの材料を探すなんて、現在では至難の技。貴重すぎて有り難みすら感じます。

大正6年当時のまま利用されている、純和風のお部屋。欄間、襖、柱など、当時の贅をつくした格調のある和空間です。隅々まで眺めたくなる繊細な細工がいくつも施されているんですよ。どれだけの人がここで時間を過ごしたんだろう…。と思いをはせながら、自分もそのひとつになれた喜びを噛みしめましょう。

※館内にはリフォーム済みのお部屋もあります

別所温泉駅から徒歩約5分の「旅館 花屋」。大正2〜4年に多くの宮大工によって建てられた1500坪の木造建築です。なんと、その約8割が登録有形文化財に認定されているんです。敷地にはいくつもの棟が点在し、すべて渡り廊下で結ばれています。そこから見える光景は、趣に溢れどこか幻想的。まるで別世界の入り口に向かっているような、不思議な気分にさせてくれます。

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広大な敷地に建つ旅館 花屋は、窓の外を彩る四季折々の光景も魅力のひとつ。ロビーや渡り廊下など、館内のいたる場所で庭を眺めてひと息つくことができます。日本の四季を感じる和風庭園を引き立てるのは、アンティーク調のインテリア。絶妙な和洋のコントラストがノスタルジックな気分を誘います。

お部屋は間取りが全て違い、それぞれに当時の宮大工の技術と意気込みが反映されています。柱や欄干には自然物をモチーフにした細工がいっぱい。自然への敬意や共存の姿勢を感じられますよ。窓から見える庭園も、空間の設えも、自分だけのためにあるような贅沢な気分に浸れそう。

箱根湯本駅からバスで約5分の「塔ノ沢一の湯本館」。1630年創業の老舗旅館で、2009年に登録有形文化財に認定されました。多くの温泉旅館がある箱根の中でも、老舗とよぶに相応しい威厳ある佇まい。旧東海道沿いというロケーションからも、歴史が滲み出ている気がしませんか？建築好きだけでなく、歴女の心も揺さぶってしまうかも…。

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大正時代からあるレトロなお風呂も楽しんでみませんか？大正6年にイタリアから輸入した大理石が使われていてなんともいい雰囲気。13～24時までは予約制で、朝の5～9時半までは予約不要で楽しめますよ。お湯はアルカリ性単純温泉。湯船につかりながら、歴史に思いを馳せてみては？

お部屋は全室早川渓谷に面しています。露天風呂付きの和室では、渓谷美を間近に癒しの湯浴みを堪能できますよ。古き良き品格の漂うプライベート空間は、まるでお忍び旅にきたような雰囲気。歴史ある旅館ならではの、魅惑的なロマンに浸れます。

由比ヶ浜駅から徒歩約1分の「かいひん荘鎌倉」。大正13年に建てられた洋館付大規模住宅建築物で、洋館と旅館が連なっています。急勾配の屋根や数の多く設けられた出窓が特徴的。2009年に洋館部分が登録有形文化財に認定されました。古い洋館好きなら、きっと一目惚れしてしまうはず。

洋館にあるラウンジは、穏やかな時間が流れる空間。照明やカーテンひとつひとつに、歴史が宿っているようなクラシックな雰囲気です。かつてリゾートホテルだったかいひん荘鎌倉。その時代には、多くの文化人に親しまれたそう。インテリ気分に浸って過ごしてみては？

登録有形文化財に認定された洋室のお部屋は、なんと1室のみという貴重な存在。アール・ヌーヴォーの装飾が施された華やかな空間です。リビング付きの贅沢な間取りで、特別なおこもり旅にぴったり。華族になった気分で非日常感を楽しめますよ。

湯田温泉駅から車で約5分の「湯田温泉 名勝 山水園」。大正時代に建てられた後、増築を重ね現在の宿の姿になりました。登録有形文化財に認定された建物に加え、宿の日本庭園も見どころです。3つの様式の日本庭園があり、こちらは登録記念物に認定されているんですよ。屋内外ともに価値が認められている二冠の宿なんです。これは見応えがありそうですね♪

客室を含む増築部分は、数寄屋師・笛吹嘉一郎が手掛けたものだそう。建物の随所に数寄の技と遊び心が込められています。その数々の意匠は「まるで木造建築の博物館」といわれるほどの見応え。部屋の隅々まで堪能すれば「和室って面白いな♪」と新しい発見があるかも。

宿には3本の泉源があり、これらを混合した源泉掛け流しのお湯を楽しめます。山懐に抱かれた外湯では、森林浴と温泉を同時に堪能できますよ。木や石など天然の素材にこだわった湯船にも注目。肌に触れる感触や香りが良く、自然への親しみがグッと高まります。

大正ロマンのムードが漂う、登録有形文化財の宿。本物の価値を感じられる場所だからこそ、トリップ感も刺激もひとしおですよね。当時の文化や美意識は、私たちの感性に新しい発見をくれるかもしれません。ハイカラさん気分になって、思いきり非日常を楽しんでみませんか。